かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

かけ算の手続的知識・概念的理解

 利用マニュアルによると,GironHubの画面は,「議論メニュー」「議論スレッド」「議論タイムライン」「観戦タイムライン」「雑談タイムライン」で構成されています。「掛け算の順序は重要か?」の議論は2023-07-12に開設され,このページを最初に知ってはてブしたときには,喜兵衛氏による4ブロックの投稿のみでしたが,本記事執筆時点では,まほろば1111氏のコメントが加わっています。
 「掛け算の順序で解答の正誤を判断することには反対の立場です。」から始まる喜兵衛氏のコメントに,未定義で気になる語句が入っていました。「手続的知識」と「概念的理解」です。
 少し,GironHubの内容から離れます。「手続的知識」は「(手続きが)できる」,「概念的理解」は「(その概念が)わかる」と区別され,「できるが,わかっていない」子どもをどうするかが,概念的理解を身につけさせる際の問題意識となるはずです。
 小学校2年のかけ算に対応付けるなら,「手続的知識/できる」は,例えば「九九を用いてかけ算の計算ができる」であり,「概念的理解/わかる」は,例えば「『1つ分の数×いくつ分=ぜんぶの数』に基づいて数量を理解しかけ算の式に表せる」を挙げるべきでしょう。
 とはいえこれら2つの例示は,喜兵衛氏が例示する「手続的知識」「概念的理解」の,小学校算数のかけ算への適用と,異なっていることも,読んで推測ができます。
 学術文献から,かけ算の学習において「概念的理解」に相当するものを指摘しているのは,以下のところです。

「一あたり量がいくつ分」というかけ算の文章題で言えば,スキーマ的知識は「一あたり量がいくつ分というかけ算の問題は,全体量=一あたり量×いくつ分という式に基づく」のように表現できる。一方,Yは式の順序とかけ算の意味との対応づけが不十分であったことから,Yが有していたスキーマ的知識は「かけ算の問題は,全体量=ある数×他の数という式に基づく」のような不十分な状態であったと考えられる。そこで,問題の状況を表す絵を取り入れた教材に即して学習することにより,式の順序とかけ算の意味とが正しく対応づけられ,スキーマ的知識がより精緻なものになったと考えられる。(p.59)

 次に,かけ算の概念や指導が集約された1冊として,算数授業研究 VOL.80を参照しました。「できるけれどわからない」や,「道具的理解」「関係的理解」が,p.21に書かれていました*1。「かけ算をするときの拠り所は,かけ算のイメージとしか言いようがない。」「イメージを描くことができず文の中に登場した数の順序だけに頼っている子どもである。」*2を含むpp.52-53には,見出しを含めて17回,「イメージ」が出現し,これも概念的理解に近いものと見なしてよさそうです。
 以下は検索して見つけた,「手続的知識」「概念的理解」またはその類似語を含むページなどです。

*1:清水美憲:かけ算の学習指導における論点は何か。なお,関係的理解は「わかってできる」としています。

*2:正木孝昌:「かけ算のイメージを育てたい」