かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

2023年の掛け算順序問題

2023年2月にKADOKAWAから「(仮)小学生の保護者の教科書〜小学生の子どもを持つ親が知っておきたい55のこと」という本を出します。これは小学生の子ども持つ親が知っておきたい、さまざまな情報を現役の小学校教員目線で面白おかしく書いた一冊です。試験的に本編からいくつかのチャプターをnoteで公開します。

 著者は小学校教員とのことです。しかし,後半の「②掛け算順序問題」を読むと,驚きでいっぱいです。算数の教科書で目にする「かけ算」でも,学習指導要領のほか算数教育の書籍で多用される「乗法」でもなく,「掛け算」を,小見出しと,直後の段落で採用しています。
 「3このドーナツを2人に配っても、2人に3このドーナツを配っても」のような対比は,2年の教科書に見当たらず,実際にはa×bとb×aの違いを,文章題や,おはじきの並びなどを通じて確認し理解していきます*1。500×1.1は,1.1×500として求める*2のではなく(「たしかめ」としては有用ですが),1.1という小数をかける計算の意味(乗法の意味の拡張)や,その計算方法は,5年で学習する重要な事項です。
 「4×100mリレー」に関して,古くは『坪田耕三の算数授業のつくり方』で取り上げられていますし,現在使われている教科書からだと,https://ten.tokyo-shoseki.co.jp/text/shou/sansu/introduction/page02.htmlの▼6年p.90~91で知ることができます。「4×100mリレー」が4mずつ100人ではないのは,わかりきっていることです。「1回のバトンパスで約何秒記録を短くすることができますか。」の問題を解くにあたり,4人によるリレーなのでバトンパスは3回となる点は,「情報活用能力,読解力育成」として興味深いものです。
 記事の「①漢字のとめ・はね・はらい」を見ると,「ア 縦画の終筆をはねて書くことも,とめて書くこともあるもの」から始まる画像が貼り付けられており,画像の下の出典で検索したところ,https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/pdf/2016022902.pdf#page=61に見つかります。「②掛け算順序問題」についても,同様に,小学校教師も,子どもの保護者も,一目で納得できる情報と信頼のできる情報源があればよいのですが,著者に期待するわけにもいきません。小学校学習指導要領解説算数編と合わせて読みたい,2010年・2011年の文献より2つ,取り出しておきます。


稲田百合「まるごと2年生 2年生担任が まず読む本」


小島宏「小学校新卒教師に贈る算数科授業の基本技88」

 今年,PDF文書で報告された授業の状況を,3×2の,子どもたちの発言で紹介しています。問題への批判を含み,昨年公開された,保護者向けの記事には先生100人超に聞いた!「かけ算の順序問題」に保護者はどう向き合うべきか? | manaviがあります。

*1:https://takexikom.hatenadiary.jp/entry/2019/06/21/060837

*2:「整数×小数」が期待されるところに「小数×整数」の式を答える子どもがいたら,というのを[isbn:9784491026350] p.92で読むことができます。