かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

14÷4=3あまり2を表す2つの図

 目次を見ると,小学校算数の事例も含まれていました。事例①(あまりのあるわり算)に,ノートの一部(例)として,「14÷4=3あまり2」を表す,2つの図が載っていました(p.9)。

 前のページによると,主な学習活動は「余りがある除法で、余りの大きさと除数の関係を考える。」という授業です。余りがある場合の式の表し方は,学習済みです.
 「あめを□こつかんで、1ふくろに4こずつ入れます。あまる数がもっとも大きいとき、おまけがもらえます。」から始まり,「4こずつ分けるときのあまりの数がもっとも大きいのはいくつか考えよう。」と問います。この場合の答えは「3」で,除数が2以上の整数nであれば「n-1」と一般化できるのですが,小学校3年向けの授業としては,そうするわけにもいきません。「□」では考えにくいので,「□が14のとき」の問題場面を図にし,そこから,「14÷4=3あまり2」を得ます。
 なのですが,この児童は当初,画像の左下のような図にしています。丸を14個,横に並べて*1から,3個ずつを囲っています.囲みは4つ作られます。囲まれなかった2個の丸が「あまり」で,式は「14÷4=3あまり2」です。
 これは場面に合っていません。「4個ずつ分ける」ことが,その図に示されていないのです。「2」の右の,赤で塗りつぶされた小さな丸と,下に伸びる線について,元のPDF文書では,「14÷4の商と余りを計算で求めることはできるが、問題場面を表す図において、商と除数を正しく表すことができていない。」という囲みに行き着きます。
 画像の右下のように,児童がノートを修正します。新たに14個の丸の並びを作るのではなく,当初間違いだった図に,4個ずつが「1ふくろ」となるよう,太い赤線で囲っています。あまりの2個と,図の上の「□が14のとき」「14÷4=3あまり2」は,書き換えていません。
 ところで,「14÷4=3あまり2」に限れば,当初のような等分除に基づく図でも,修正した包含除に基づく図でも,「あまり2」は同じです。
 ですが「15÷4」の図を作ると,状況が異なってきます。包含除に基づく図では,「14÷4」の図から,あまりに丸を1個増やすだけです。等分除に基づく図で同様に行うと,1つ分が3個というのが4つ分のあと,あまりも3個になります。これも1袋にできるじゃないかと判断して囲むと,結局それは,「15÷5」または「15÷3」を表した場面になってしまいます。
 この事例を通じて,問題場面・図・式の3つ組で認識することの意義を理解したあと,「問題場面」という言葉はあまりなじみがないなと思いながら,都算研の学力実態調査を読み直したところ,https://tosanken.main.jp/data/jittaityousa-kousatu/R04jittaityousakousatsuad/%E7%AC%AC%EF%BC%92%E5%AD%A6%E5%B9%B4%E7%B5%90%E6%9E%9C%E3%81%A8%E8%80%83%E5%AF%9F.pdf#page=3の下部に「問題場面(言葉)」「式」「図」を相互に矢印で結んだ図がありました。

*1:「14」だから横に並べられたけれど,もっと多くなると大丈夫なのか,という疑問については,同じページの下部では,被除数が23や30のとき,丸を2列に並べています。2問とも除数が4なので,1つ分は田の字に取っていますが,奇数になっても図示は難しくありません。