かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

小学校の算数教育に物申す前に

 記事を読んで,思ったことを書いていきます。《...》は上記ブログからの抜き書きです。

《私が小学生の頃(20年前)はそんな規則はなかった》

 20年前よりももっと古い,テスト問題や指導の事例があります。

《算数嫌いを増やしてしまうリスクがある》

 そのようなエビデンスは見当たりません。
 wikipedia:かけ算の順序問題の「また、一旦、絵にもとづいて式と答えを書くことができるようになった児童が、かけ算の順序を指導された後、文章題が解けないと言い出し、式を書くのを躊躇するようになった例が報告されている」については,文献をhttps://www2.sed.tohoku.ac.jp/~edunet/annual_report/2011/11-06_miyata.pdfより読むことができます。主眼は,「式を書くのを躊躇するようになった」ではなく,介入指導を通じて「式の意味を理解し,文章題において正しい立式が可能になった」です。

《<答案A>(椅子の数)×(椅子1個あたりに座れる人数)=6個×7人/個=42人》

 国内では『算数科の教育心理』という1957年の書籍,海外に目を向けると1983年・1988年の書籍で,類似の考え方が示されており,かけ算の導入時に採用されていないことも合わせて知ることができます。

《小学校の指導要領では<答案A>はNGのようなのです》

 小学校学習指導要領およびその解説には,どのような答案を正解・不正解とするかは書かれていません。なお,被乗数・乗数の違いは,高学年でも配慮されています。「7人/個」のようなパー書きを使用した式は,(2年の算数の)教科書では採用されていません。

《「(1個あたりの人数)×(個数)」の順番で掛け算しなさいというルールが、なぜそうなのかを小学校の先生方は子供たちに納得できる形で説明することができますか?》

 そうすることで,「7人ずつ,6つ分」と「6人ずつ,7つ分」をそれぞれ「7×6」「6×7」と簡潔に書き分けることができます。それと別に,因数×因数に基づくかけ算の意味づけが,1960年代に米国でなされましたが,「現代化」とともに頓挫し,昔も今も日本では「一つ分の大きさ×幾つ分」で導入がなされています。

《『「1個あたりの人数」と「個数」を掛け算すれば全体の人数が求まる』という理屈を理解して、実際に計算ができるようになる、という目標が達成できれば十分》

 不十分です。掛け算の結果,どうして答えが人数になるのか(を子どもたちが理解し説明できるようになること)が欠落しています。

《多少厳密性には欠いていたとしても、直感的でもいいから極限の概念を理解させ、その先の微分積分の楽しさ・有用性を味わってもらう方が、ためになるでしょう》

 掛け算も,「1つ分の数×いくつ分=ぜんぶの数」で(多少厳密性を欠いた形で)導入し,5年で「意味の拡張」を行っています。なお,2年でも,直積でモデル化される場面では,a×bとb×aの両方の式が認められています。

《(年数)×(1年あたりの日数)=3×365 = 1095日》

 単位の換算と密接に関連します。

《Q. 2yの3倍は何ですか?》

 中学数学の学習です。乗法の交換法則と結合法則,それと係数の概念を,いつ学習するとよいかについて,考慮したいところです。

《気体方程式 PV=nRT》

 理想気体の体積・圧力・温度の関係を明らかにしたボイル=シャルルの法則を、乗算のみになるよう式変形し,文字はアルファベット順にすることで,この等式が得られます。
 「かけ算の順序」と状態方程式の関わりについては,今年出版された『子どもの算数、なんでそうなる?』でも言及があります。同書を知らずに取り上げたのなら無知ですし,知っていて挙げなかったのなら,同じブロガーとして残念に思うところです。