かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

さんすうレスキュー!のかけ算

 楽しく視聴しました。
 ただ,問題設定になる「おなやみ」に至るまでのところ,ケントくんが言う中に,引っかかりがありました。動画では01:05ごろです。

「一人に,7個ずつキャンディーをあげようと思っているんだけど,いいアイデアでしょ?」
「でも…一人7個ずつ,4人分を用意するのに,全部で何個キャンディーを買ったらいいのかわからなくて…おたすけレスキュー,たすけて~!」

 引っかかった言葉は,「ずつ」です。「一人7個ずつ,4人分」と言っているのであれば,ケントくんは「かけ算の構造」をきちんと認識しているのではないか,ということです。
 ここの発言に限れば,「ずつ」はなくても(例えば「一人7個で,4人にあげる」と表現しても)差し支えないように見えます。
 ですが,「たすけて~!」のあとの文字による表示,具体的には

キャンディーを7こずつ4人にあげる
ぜんぶで なんこあればいい?

のところで,「7こずつ4人にあげる」を「7こを4人にあげる」と表記したのでは,「全部で7個用意して,それを分配すればいいじゃないか」というツッコミも考えられます。
 解く(レスキューする)側の形式化の段階で「ずつ」を取り入れるのではなく,問題を抱える側から,かけ算の構造を示唆する「ずつ」を表明していたわけで,1回目の視聴では違和感を持ちましたが,2回目には,これは編集の都合かなと,思うようになりました。
 10分間の放送で,初めて観ても,各キャラクターの役割は容易に知ることができます。ケントが「かけ算の構造」を認識しているか否かは重要ではなく,この子は,「なんこあればいい?」をもとに,求め方が分からない(のでレスキューを求めた)という役割を担っています。また,かけ算の構造と密接に関係する「一つ分の数かけるいくつ分,で,ぜんぶの数が計算できるよ」は,03:09ごろ,主人公のイチカをサポートするレスが発言しています。
 自分自身は多数のキャラクターを用意したショートコントなどを構成する立場にありませんが,対話型の文章をつくったり,Twitterの(「かけ算の順序」に限ることなく)やりとりを読んだりするときに,それぞれの期待されている役割や効果を,考えると良さそうに思えてきました。
 動画ではほかに,

  • イチカが「7+4=11」と間違う(01:40ごろから)
  • 寿司の個数で「2×3,二三が6だから全部の数は6」(3:04)と言って立式と計算(九九の適用)とを分けている
  • お饅頭の並びを見て「これは…3の段だね!」(09:40)と,一つ分の数をイチカが設定している

といったシーンがあり,2年のかけ算学習の「あるある」で,好感を持てました。