かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

事前も事後も不正解が48%の授業実践報告

 2・3年の教科書の内容を(批判的に)参照し,かけ算を「1あたりの量×いくつ分」と意味づけることに基づいて,2時間で構成された「0の段のかけ算」の授業について報告しています。ただし実際の授業は,「公立小学校(4年生:32名)で大学院生が行った」(p.68)ものでした。
 引用文献にいくつか,興味深いものがありました。高橋(2011)は[isbn:9784000295802],宮田他(2011)はhttps://www2.sed.tohoku.ac.jp/~edunet/annual_report/2011/11-06_miyata.pdfです。森川(2012)はhttps://cir.nii.ac.jp/crid/1521699230527068288,また梶原(2013)はhttp://kurokawarika.world.coocan.jp/pma/depot.htm#dep0t136で,それぞれ書誌情報を見つけましたが,本文の入手は難しそうです。
 「意味づけ」という表記が,p.68右カラムの一つの段落に3回,出現します。メインブログ(わさっきhb)の日本数学教育学会による,乗法の意味づけのほか,0にかける,0をかけるでも取り入れています。
 かけ算の意味とは別に,「有意味学習」という表記も何回か出現します。「機械的学習」との対比をなしているのですが,有意味受容学習とは - コトバンクが参考になりました。
 詳しく見ていきたいのは,かけ算の順序を問う多肢選択式の文章問題です(Table 9, p.72。引用にあたり空白・改行などを変更しています)。

【一時間目の事前事後質問の内容】
(1) 自動車が2台あります。自動車1台にタイヤは4つ,ついています。タイヤの数は全部でいくつでしょう。この[問題]の式は,次のどれだと思いますか。
① [   ] 2×4
② [   ] 4×2
③ [   ] 2×4,4×2,どっちでもよい。

 「事前事後質問」ですので,一時間目の授業の前に解答させ,授業が終わった直後にも解答させています。同じページのすぐ下に,著者は②を正答と考えており,事前事後の正誤を[○○] [○×] [×○] [××]で表したときの人数分布が,Table 10より読めます。箇条書きにします。なお×の場合に,①,③,その他のいずれであったかは,本文から得られませんでした。

  • [○○]:10名 (32%)
  • [○×]:1名 (3%)
  • [×○]:5名 (16%)
  • [××]:15名 (48%)

 「著者は②を正答と考えており」を具体的に記すと,こうです。文章問題では「自動車が2台」「タイヤは4つ」の順に書かれているけれども,「1あたりの量×いくつ分」の式に基づくと,4を先,2を後ろに置いたかけ算の式で表す必要がある,というわけです。この点について,3節(授業記録(一時間目)―0の段の式理解―)では,「2×3」と「3×2」との違いを考えさせる場面はあるものの,2つの数をひっくり返して式にするような文章問題は見当たらず,本文献でも「その考え方・習慣自体を問う発問を授業に組み入れる必要があると思われる」(p.74)として課題に挙げています。
 もう一つ,メインブログの記事を思い出しました。かけ算の順序論争について(日本語版)です。「かける数が先の文章題」と「a×bとb×a」とで,小節を分けて,説明していました。