2024年9月の教科書読み比べ実施の際に,関心を持って探して見つけた事例と,たまたま見つけた事例が,いくつかありました。「かけ算の言葉の式」「累減」「よみとる算数」「クエスチョンマークで終わる文」に分けて,以下で紹介します。
かけ算の言葉の式
(4)かけられる数とかける数では,どの教科書でも,最初のかけ算の式に「1つ分(の数)」「いくつ分」「ぜんぶの数」の吹き出しなどを添えることを紹介しましたが,「1つ分の数×いくつ分=ぜんぶの数」という言葉の式は,すべての教科書に載っていたわけではありませんでした。
「1つ分の数×いくつ分」を含む,言葉の式の出現を確認できたのは,以下の2か所だけでした。
- 東京書籍 新編 新しい算数 2下 p.24
- 教育出版 小学算数2下 p.8
ですが,かけ算の言葉の式は,3年以上の教科書によく見かけました。いずれも,「1つ分の数×いくつ分=ぜんぶの数」の派生と言えます。以下を,記録していました。
- 東京書籍 新編 新しい算数 3上 p.20: 勝ったときの点数×回数=とく点
- 同 p.33: 1人分の数×人数=全部の数 になるから…。
- 大日本図書 新版 たのしい算数3年 p.28: 点数×入った数=とく点
- 教育出版 小学算数2上 p.12: 点数×入った数=とく点
- 啓林館 わくわく 算数3上 p.12: ことばの式 点数×はいったこ数=とく点
右辺(積)が「とく点」となる式は,いずれも,乗数又は被乗数が0の場合の計算*1の学習の中です。「得点」の「得」の漢字は,5年で学習するということもあり,いずれも「とく点」です。
教科書会社とページ数を失念しましたが,5年の,整数×小数のところで,「1mのねだん×長さ=代金」という言葉の式も見かけました。
累減
「累加」の対義語は「累減」です。(9)累加では,教科書各社の出現状況のほか,末尾に「累加」という用語の注意点を書きました。
累加は,a+a+…+aと表せますが,累減をa-a-…-aと書くわけにいきません。より適切な式は,例えばA-a-…-aです。Aから,aを何回か引いて,負でない最小の数にします。0になったら,Aはaで割り切れることを意味し,そうでなければ,「負でない最小の数」が,Aをaで割ったときの余りとなります。
小学校算数2年・3年各社の教科書で,累減の式を探したところ,東京書籍 新編 新しい算数 2下 p.49にのみ載っていました。「0をめざして」と題し,「100から 同じ 数を 何回か ひいて、答えが 0に なるように します。下の 数を 100から 何回 ひくと、0に なるかな?」という文章がありました。
上記のAとaを用いると,そこで挙げられていたのは,A=100は固定で,aは,10,20,50,25の4通りでした。実際,次のように並んでいました(「=0」は縦に揃っていました)。
100-10-10-10… =0
100-20-… =0
100-50-… =0
100-25-… =0
いずれも,最終的に0になります。該当箇所に,かけ算・わり算の式はありませんでしたが,10×10=100と100÷10=10,20×5=100と100÷20=5,50×2=100と100÷50=2,25×4=100と100÷25=4を想起することができます。
よみとる算数
啓林館の算数用語集では,「よみとる算数」と題した,教科書の抜粋を見ることができます。
見開きの左のページは,「日記」を子どもが書いたという体裁で,縦書きです。数は漢数字で表記されています。内容的には,国語(これくらいの長さの文章を書く)と生活(遊ぶ活動,身近な人々と伝え合う活動*2)も関わっています。右ページには,その内容に基づく,算数の問題となっています。
令和6年度の啓林館 わくわく 算数2下にも,「よみとる算数」はありました(pp.112-113)。上記ページと,形式は基本的に同じですが,内容はまったく異なっていました。
全文を書くことも,写真撮影をすることも,できませんでした。算数の問題は,大問1が時刻と時間,大問2がかさ(リットル・デシリットル),大問3がかけ算でした。
クエスチョンマークで終わる文
ふだん,書き言葉で,「。」や「.」ではなく「?」で文を終えることは,よくあります。(日本語の話です。)
しかし算数に限らず,教科書,学力テスト・入試問題などで,「?」で終えて問うことは,見かけません。
なのですが,今回教科書を見ていくと,「?」で終わる問い方を目にしました。
上述の通り,東京書籍 新編 新しい算数 2下 p.49の「下の 数を 100から 何回 ひくと、0に なるかな?」が,その一つです。もう一つは,学校図書 みんなと学ぶ 小学校 算数 2年下 p.7の最下段で,「かけ算の 答えは どうやって もとめれば いいかのかな?」です。
これらの共通点として,本文と違うフォントで書かれていること,発展的な学習や次の学びを誘うところでの問いかけであること,が挙げられます。