前回書いたことを,8マス関係表を使って再検討します.
まず,小学校の算数で共有されている,場面(文章題)・図・式の関係は次のとおりです.
「⇔」と「⇒」を乗せました.「⇔」は,同値関係です.左ならば右であり,右ならば左でもあります.
「⇒」は,“ならば”です.左ならば右,だけど逆は真ならずの関係です.実際,「3×5=15」を表す図や文章題は,他にもたくさん考えられます.
それに対して,「囲い込みなしのアレイ図」を根拠として,3×5=15も5×3=15も正解とすべきだという主張は,次の図になります.
この図は,次のことを示しています.すなわち,「さらが 5まい あります。1さらに りんごが 3こずつ のって います」という状況で,5×3=15がりんごの総数を表す式であるのならば,その式は,「さらが 3まい あります。1さらに りんごが 5こずつ のって います」という状況に対する式でもあるのです.
強調しておきたいのは,“小学校の算数で共有されている”関係を,根拠とすることなく,「囲い込みなしのアレイ図」を根拠として,そのことが言えてしまうという点です.
「2×8ならタコ2本足」(http://www.asahi.com/edu/student/teacher/TKY201101160133.html)にも適用できます.「囲い込みなしのアレイ図」を用いることで,2×8が「タコが2匹います。それぞれ足は8本。全部で足は何本?」という場面になると主張しても,「タコが8匹います。それぞれ足は2本。全部で足は何本?」という場面を表す式でもあるわけです.
そして式と対応する2つの場面のうち,一方を取り出せば,「2×8ならタコ2本足」です.
結局のところ,「2×8をタコ8本足と見ることができると言っても(私はその考え方に賛成しないけれど,あなたがそう主張するなら,そのロジックで),2×8はタコ2本足と見ることができるんだよ」となります.
なお,「囲い込みなしのアレイ図」は本質ではなく,そこを乗法の交換法則や,トランプ配りに置き換えても,同じ流れを得ることができます.かけ算の式で表される,ある種の文章題に対し,被乗数と乗数を逆にした式も認めることによって,発生する課題と言っていいでしょう.
ルート64の件も,図にしてみました.
8マス関係表のPowerPointファイルをアップデートしました.
eightcell.pptx
(最終更新日時:Sat Jun 30 06:17:02 2012ごろ)