- 作者: 遠山啓
- 出版社/メーカー: 日本図書センター
- 発売日: 2012/02/29
- メディア: 大型本
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(p.18)
真ん中の数を,周囲のそれぞれの数にかけて,素早く答えを言う練習問題です.例えば左側だと,「9×2=18(くに18),9×6=54(くろく54),…」などとなります.
この図式はこれまでにも見てきたのですが,ちょっとびっくりしたのは,中央が「9×」「5×」となっているところです.もちろん欧米式の「9倍」「5倍」を意味してはおらず,言葉にするなら「9かける」「5かける」,そして意味合いとしては,「9にまわりの数をかける」(5も同様)といったところでしょう.
記憶と記録をたどってみます.最初にこれを面白いと思ったのは,2012年6月のことで,もう一つのブログで記事にしています.
ここで最後に,図をお見せします.
他の本でも,目にしたことがあります.
筆算の順序 - わさっき
この問題を最初に見たときは,百ます計算の対抗くらいに思っていました.
しかし,筆算を念頭に置くと,また別の意義が浮かんできます.これは,中軸になる数を「かけられる数」,その外にある数を「かける数」として,いろいろな方向に「かける」ことができるようになってほしい,という出題意図になっています.筆算の素地指導なのです.
これと同様の図形を,戦前の書籍から見つけることができました.最初は,かけ算ではなくたし算です.
「計算練習表」という名称がついています.http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1457148とhttp://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1462874*1を読み直したところ,たし算,ひき算,かけ算の,いろいろな計算問題で出現します.
かけ算の問題の初出は次のとおりです.「中央の空所に乗数を入れ」となっており,もともと中央は,かける数でした.
内容は割愛しますが,『算数に強くなる水道方式入門 (1961年)』p.207にも4つ,真ん中の数を,周囲のそれぞれの数にかけるという出題があります.中央は「7×」などとなっています.