6年前の刊行物を読み直していて,一つ,興味深い出題を,見つけました。
弟が,いたずらをして,ある月のカレンダーの日にちを,全部まっ黒に塗ってしまいました。さて,この月は何日ある月でしょうか。
小学2年生のかけ算の学習に,手ごろな問題です。読み進めると,「3×5に4×2が2個ついたもの」「3×7に10をたす」「5×7から4をひく」「4×5が2つ,それから3×3を引けばいい」といった求め方が書かれています。最後については,以下のように見ているわけです。
これらの求め方のほか,1ずつ愚直に数えることでも,「31日」という答えを得ることができます.31は素数ですので,●を移動させて「a×b=31」という形にはできません。
文章を読み終え,他にどんな求め方があるか,考えてみました。
カレンダーなので,「28日」の位置が思い浮かびました。
「1日(ついたち)」が左上にくるよう,移動させてみます。
こうすると,「7×4=28 28+3=31 答え31日」と求めることができます。
著者あるいは学校の先生が考えもしなかったことを,自分は思いついたんだぞと,主張したいわけではありません。ある月のカレンダーであるという情報を,いったん*1取り除いて,数を求めるのは,抽象化という面で大事なことです。算数に限らず,与えられた問題を解決するのにどんなことが活用できるか,その求め方・考え方を,クラスの友達や,先生に言って,分かってもらえるかというのは,それはそれで興味深く,そして難しいのです。
そろそろ,出典を挙げておきましょう。
- 守屋義彦: まずは『が』のかけ算を大切に, 算数授業研究, 東洋館出版社, Vol.80, pp.40-41 (2012).
この号は「算数授業論究II」というナンバーも振られており,「かけ算を究める」と題して特集が組まれています。前年に『かけ算には順序があるのか』が出版され,各解説の中にも,この本を明示したりしなかったりしています。この号で他に,複数の執筆者が出典に挙げている本として,『算数・数学教育と数学的な考え方』(金子書房,1981年刊)があります。2015年に復刊した*2こと,2017年に文部科学省が公表した小学校学習指導要領の算数に「数学的な見方・考え方」という言葉が入ったことを,思い出さずにはいられません。
*1:答えは「31」ではなく「31日」としないといけないので,カレンダーに戻って考える必要もあります。