かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

必要画用紙数問題を正解するには

 「ことばのたつじん」「かんがえるたつじん」という,著者らが考案した2つのテストについて,詳しく報告されています.
 なのですが,それらのテストの話より前の,ある出題*1への分析に,違和感を覚えました。問題は以下の通りです(p.45。問題番号の「⑤」は除去しています)。

1まいの画用紙から,カードが8まい作れます。
45まいのカードを作るには,画用紙は何まいいりますか。

 式,図,答えを書く欄があります。誤答例1は,式が「45÷8=5…5」で,図は問題文の数量関係を表しておらず,答えは「5まい」です。誤答例2は,式は「8×45=360」,答えは「360まい」で,図には45×8の筆算を書いています。
 誤答例1のほうが,正解を得るには近いと言えます。「45÷8=5…5」を,画用紙とカードの関係に当てはめると,「5枚の画用紙があれば,40枚のカードが作れる(しかし45枚のカードには5枚足りない)」と表せます.そこで画用紙をもう1枚増やして6枚にすれば,作れるカードの数は8×6=48となり,「45まいのカードを作る」ことができます。
 分析では,太字の小見出しと本文に1回ずつ,「常識」という言葉が出現します(p.44)。

 常識を使って、書かれていない数字を自分で考えることができない
 文章題の意味を考えない、文章にある数字をやみくもに使い、文章にない数は答えに書けないという多くの小学生の問題は、問題5「必要画用紙数問題」の解答にも見てとれる。この問題も、正答率は低く、3年生で41%、4年生で49%、5年生でも60%の子どもしか正答していない。45÷8では余りが出てしまう。この文章に書かれていない余りをどうするかを、「画用紙5枚では40枚のカードしか作れない、だからもう1枚余分に画用紙が必要だ」と常識を使って考えることができないのである。このタイプの間違いは、3年生の23%、4年生の21%、5年生の14%に見られた。ちなみに、別の典型的な間違いは、他の問題と同様、とにかく問題文の数字に思いつく演算を適用してしまうタイプのものである。このタイプの誤答は3年生の25%、4年生の21%、5年生の15%に見られた。

 この文章の内容に沿って,誤答例1,誤答例2と並べていたのでした。個人的には,誤答例2(問題文の数字に、思いつく演算を適用する(p.45))については,数量関係を把握して適切な図を描く練習が必要と考えます。
 誤答例1に対しては,「常識」に期待するよりも,「あまりのあるわり算」で注意すべき問題(文章題・図・式・答え)を知っておくことが,より有用と感じました。「商に1を加えてから,単位を添えたものが正解」という文章題と,「商に単位を添えたものが正解」という文章題があります*2
 具体的には,令和3年度 全国学力・学習状況調査の小学校算数の大問4(1)です。

(1) ボールが23個あります。1箱にボールを6個ずつ入れていきます。
 全部のボールを箱に入れるには,何箱あればよいかを求めるために,下の計算をしました。
    23÷6=3あまり5
 全部のボールを箱に入れるには,少なくとも何箱あればよいかを書きましょう。

 画用紙の件と同じく,「商に1を加えてから,単位を添えたものが正解」の文章題です。ただし解答用紙に単位は記入済みなので,「4」が正解となります。わり算の式が問題文中に書かれていたこともあり,正答率は83.1%でした。
 報告書で横並びになった図(p.71)を見ると,式は「23÷6=3あまり5」と同じだけれど,文章題・図(数量の関係)・答えが異なっています。

 画用紙の文章題に適用するなら…
 式に「48÷8=5あまり5」,答えに「5まい」と書いた児童がいたときに,「おしい! 『1まいの画用紙から,カードが8まい作れます。45まいのカードを並べ替えてもとの画用紙のサイズにすると,画用紙何まい分になりますか。』なら正解なんだけど」と反応してから,3年の算数教科書の,「あまりのあるわり算」の文章題を復習するというのは,どうでしょうか。

*1:「2020年10月に福山市の3つの小学校で3,4,5年生を対象に実施しされた」(p.35)という算数文章題テストの一つです。

*2:4年以上で割り進みを行ったなら,商を切り上げるか,切り捨てるかの違いです。