かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

だんの数とまわりの長さのかけ算

 「学校図書版:みんなと学ぶ小学校算数4の下」*1から,正方形の並びの図,「だんの数とまわりの長さ」の表,そして設問が,貼り付けられていました。設問は以下の通りです。

③ だんの数を□だん,まわりの長さを○cmとして,□と○の関係を次のような式で表しました。どのように考えたか説明しましょう。
    4×□=○

 形状は異なりますが,説明の仕方が複数あることは,以下で集約を図っていました。

 そこに書いた「求め方①」「求め方②」をアレンジすることで,上記の③の答えとして,次の2通りを挙げることができます。

  • 1だんふえると4cm長くなり,1だんのときは4cmだから,□だんだと,4+4+…+4=4×□=○*2
  • 1辺の長さが1cmの正方形(まわりの長さは4cm)の□こ分と等しいから,4×□=○

 冒頭でリンクしたページを読み進めると,気になる記述にぶつかりました。

表から「だんの数」を4倍すると「まわりの長さ」になることは、判断できます。よって・・・
「 ⊡ ×4=〇」・・・としてもよいです。

 数だけを見ると,だんの数を4倍すると,まわりの長さになります。ですが4だんを4倍すると,答えは「16だん」であって,「16cm」にならない,というツッコミをすることができます。
 実のところ,この「だんの数とまわりの長さ」の件で,□×4=○というかけ算の式を認めるにあたり,その根拠として,「1つ分の数×いくつ分」や「基準量×割合」を採用することはできません。これらは,被乗数と積は同種の量で,乗数は(具体的な場面では「4だん」「□だん」であっても)無次元量となるのですが,「□×4=○」や,例えば□に5を当てはめたときの「5×4=20」について,被乗数と積は異種の量になっているのです。
 とはいえ「ともなって変わる量」の単元の中で,□×4=○の式に表す活動があることも,把握しています.その際の説明として,小学生の期待される反応は「表から,「だんの数」を4倍すると「まわりの長さ」になる」で,教師向けには「帰納的な考え」を添えるといいでしょう。
 学術文献からだと,Vergnaud (1983, 1988)の「関数関係」です。それに対し,4×□=○も,「1つ分の数×いくつ分」も「基準量×割合」も,スカラー関係に基づきます。当ブログとメインブログ(わさっきhb)から,1件ずつリンクします。

 なお,「1㎤あたりの質量である7.87gに、(それがどれだけ分あるかということで)体積の125㎤をかける」と「体積の125㎤をg単位の数値に変換するため、密度の7.87g/㎤をかける」も,それぞれスカラー関係と関数関係で説明がつきます。

*1:[isbn:9784762555985]と思われます。

*2:左辺には,中カッコを横にした記号と,「4が□こ」を添えたいところです。