かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

段数×4=周りの長さ,追加2件

 横積みの本を整理していると,2020年に出版されたものに,「変わり方」の話が入っていました。

 「変わり方」は,pp.84-89に書かれた授業で,執筆者は,島根県浜田市立今福小学校 徳永勝俊氏です。
 本時の問題は「正方形(1辺が1cm)を1段,2段……と並べて階段の形をつくります。□段のときの周りの長さを求めましょう。」(p.84)で,『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説算数編』のpp.230-231と同じです。
 ただし,「前時には,1辺が1cmの正三角形の厚紙を(略)正三角形が20個のときの周りの長さを求める学習」(p.85)をしており,これは,『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説算数編』のpp.215-216の内容です。
 正方形の周りの長さを求める授業では,20段のときの式に「4×20=80」の発言が出て,他の児童がその理由を説明します(p.87)。「昨日の表もそうだったけど,表を縦に見ると…」や「20×4=80で80cmと言うと思います。」はその次のページです。「表」というのは,「だんの数」「まわりの長さ」の2行による表(p.88, p.89)で,p.89の左上の板書写真には,「だんの数×4=まわりの長さ」という言葉の式も,書かれています。
 以下の分析は,「変わり方」を扱った他書には見られません(p.88)。

 前時から表を横に見たときの決まりを「決まり」,表を縦に見たときの決まりを「仕組み」と名付けて使い分けていた。だから子どもの方から,「仕組みがわかれば,何段になっても答えが出る」という声が聞こえてきたのだろう。

 とはいえVergnaud (1983, 1988)の2×2の表が関連します。「横に見たときの決まり」はスカラー関係,「表を縦に見たときの決まり」は関数関係です。Vergnaud (1983, 1988)のタイトル(章題)はMultiplicative Structuresで,スカラー関係も関数関係も「かけ算の仕組み」に含まれています。
 「階段の段数に伴って周りの長さがどのように変化していくのか」を扱った最新情報は,算数授業研究 No.141のpp.58-59にあります。

 執筆者は筑波大学附属小学校算数部の青山尚司氏で,第1文の「4年生の子たちと,階段の段数に伴って周りの長さがどのように変化していくのかを考えた。」より前に「(前回のあらすじ)」と書かれています。4×10と10×4,答えは同じだけど,見方・考え方は違うで取り上げていました。
 掲載されている図は,他で見てきたり,当ブログやメインブログで作成したりしてきたものと重なります。「(前回のあらすじ)」の段落の右に描かれた形状は,『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説算数編』のp.216の「図で「×4」を説明する」の図を10段にしたものであり,p.58の右下の板書とp.59の右下のノートは,『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説算数編』のp.216の「図で「+4」を説明する」のほうです。それぞれ,図の作り直し~段数と周りの長さの関係に載せた画像の求め方③,求め方①です。
 Ta君による「でも,小さい正方形10個にすると4×10だよ」の発言と,添えられた図(いずれもp.59)は,『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説算数編』にはありませんが,図の作り直しの求め方②と合致します。
 求め方①~③を根拠に,段数が10のときは「4×10」も「10×4」も,場面(周りの長さ)を表す式として認められるのが,『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説算数編』の掲載から5年で,授業そして出版物を通じて,確立したと言ってよいように思っています。
 メインブログで取り上げたのは階段状の軌跡 - わさっきhbです。そこでは,(0,0)と(1,1)を向かい合った頂点とする単位正方形の周囲および内部での描画としていましたが,段数を10にして「段数」倍に拡大したものが,p.58右上の図となります。単位正方形も描かれており,「これ(1段目)とこれ(10段目)で,だれが見ても10倍になっている部分ってあるかな?」は先生による問いかけです。