かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

令和6年度算数教科書内容解説資料読み比べ(2)~乗法的オペレータを中心に

 各社の内容解説資料で見ることのできた教科書の抜粋から,乗法的オペレータを取り出してみました。
 オペレータについては以下をご覧ください。

 中島健三は1968年に*1,「乗法をあとにかく方法」に続けて「(乗数を operator としてみる場合に統一的にでき便利である)」と指摘しています。
 乗法的オペレータの表記例として,「2倍」「×10」を挙げることができます。また本記事では「除法的」オペレータの出現も見ていきます。「÷2」「\frac1{10}」などです。
 以下のページ番号は内容解説資料のノンブルによるものです(PDFのページや,教科書のページではありません)。

東京書籍

  • (p.13) 「×3」。矢印とともに水色
  • (p.17) 「3.6×7=□」と「36×7=252」を上下に並べ,3.6から3へ赤の矢印と「10倍」,□から252へ赤の矢印と「10倍」,252から□へ青の矢印と「\times\frac1{10}」。
  • (p.22) 「10倍」「□倍」
  • (p.42) 表に「×2」「×3」「+1」「-5」「-1」
  • (p.44) 「×10」「×100」「×1000」「÷10」「変わらない」

大日本図書

  • (p.4) 「6倍」
  • (p.5) 「0.2×6=1.2」と「2×6=12」を上下に並べ,0.2から2へオレンジの矢印と「10倍」,1.2から12へオレンジの矢印と「10倍」,12から1.2へ青の矢印と「\times\frac1{10}
  • (p.24) 通分で分母・分子に「×□」。約分で分母・分子に「÷□」
  • (p.33) 「12倍」
  • (p.38) 数直線にオレンジ色で「×10」と青で「÷24」。セリフに「2人とも÷24と×□」をしています。」。「96÷2.4=□」と「960÷24=40」を上下に並べ,96から960へオレンジの矢印と「10倍」,2.4から24へオレンジの矢印と「10倍」,□と40は青の両向き矢印と「等しい」

学校図書

  • (p.10) 「40×6=240」と「80×3=240」を上下に並べ,40と80の間に下向き赤矢印と「×□」,6と3の間に下向き青矢印と「÷□」
  • (p.15) 3つ(乗法,等分除,包含除)の4マス関係表にそれぞれ「×14」「×18」「×□」。
  • (p.25) 「÷3は,\times\frac14としてもできるね。」「\times\frac43

教育出版

  • (p.7) 表に「2倍」「3倍」「20倍」
  • (p.11) 「10倍」「\frac1{10}
  • (p.24) 「□倍」「\frac14倍」

啓林館

  • (p.21) 「0.03×7=□」と「3×7=21」を上下に並べ,0.03から3へ矢印と「×100」,□から21へ矢印と「×100」,21から□へ点線の矢印と「÷100」。文章では「0.03を□倍した式は」「21を□でわって」
  • (p.37) 「3倍」「0.8倍」「□倍」
  • (p.38) 「□倍」「3倍」「2倍」「3×2倍」
  • (p.39) 「□倍」「÷□」「0.75倍」「\times\frac56倍」など

日本文教出版

  • (p.67) 「×□」「㋑→2.4×□=3.6」

まとめ

 各社の内容解説資料において,教科書の乗法的オペレータの使用として,最も多く目にしたのは,乗除の性質です。「除数及び被除数に同じ数をかけても,同じ数で割っても商は変わらない」は,(解説のつかない)小学校学習指導要領の算数に記載があります*2。今回紹介した内容を,これと同様の形式で表してみると,「被乗数にある数をかけて,乗数をその数で割っても積*3は変わらない」「被乗数または乗数を□倍すると,積も□倍になる」となります。
 次に出現の多かったのは,演算の決定に関するところです。二重数直線や4マス関係表での使用です。
 2件,表を縦に見るところで乗法的オペレータを使用していました。東京書籍のp.13と,教育出版のp.7のうち「20倍」です。「1つ分の数×いくつ分=ぜんぶの数」に該当しない事例であり,『小学校学習指導要領解説(平成29年告示)算数編』に例示されたものを段数×4=周りの長さで取り上げていました。
 乗算記号を使用した表記は「×(具体的な数)」「×□」「(具体的な数)倍」「□倍」のいずれかで,「(具体的な数)×」「□×」はありませんでした。

*1:https://doi.org/10.32296/jjsmep.50.6_74

*2:https://w3id.org/jp-cos/8250245400000000

*3:「積」を,https://w3id.org/jp-cos/Elementary/2017/算数でページ内検索してみると,第2学年に「一つの数をほかの数の積としてみる」「主に乗数が1ずつ増えるときの積の増え方」,第4学年の用語・記号に「積」を見かけますが,あとは「見積もり」「面積」「体積」「積極的」でした。