かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

円周から面積

 大問2は,円の面積に関する問題です。小問(1)までと,小問(2)以降に分けて画像にしました。

 小問(2)は以下の通りです。

(2) たけしさんの考え方について、4人の人が話しています。正しくないのは、だれでしょう。
けんた 円の半径がわかれば、円周の長さも計算できるので、それらを使って円の面積を求めたんだね。
なつみ たけしさんは、面積を求めることができる長方形に形を変えて考えたんだね。
ゆうすけ 円の面積を求めるには、円周の長さをはかればいいんだね。
ゆき 半径の長さが変わっても、この方法なら面積を求めることができるね。

 正解,すなわち正しくないのは,「ゆうすけ」となっています。
 PDFファイルでは,問題文の下に「評価基準及び割合(%)」の表があり,小問(2)の正答率は74%です。過去の出題との比較はできず,次のページに,「☆:この年度より新設した問題」という記載があります。
 「ゆうすけ」の発言内容を誤りとするには,引っかかるところもあります。実際,円の半径をr,円周をL,円周率をπ,面積をSとすると,L=2πrとS=πr²と表すことができ,r=L/2πより,S=2π(L/2π)²=L²/2πという等式を得ます。これは,円周の長さだけが既知のとき,直径や半径を測ることなく,その円の面積が算出できることを意味します。
 PDFファイルを読み進めると,「ゆうすけ」が正しくない理由が,書かれていました。

 (2)の問題のたけしさんの考え方について正しくないものを選ぶ問題では、74%の児童が、正答している。けんたは、半径について、なつみは、既習の図形について、ゆきは、公式について話をしているのに対して、ゆうすけは、円周について話している。実際は、ゆうすけの考えでも、面積を求めることが可能である。しかし、円周が円の面積とどのように関わっているのかが理解できていないため、間違っている答えであると判断していると考えられる。改めて、円周とは何か、円の性質を大切に指導していくことが大切である。

 とはいえ,「円周が円の面積とどのように関わっているのかが理解できていない」は,明快ではありません。「たけしさんの考え」と小問(1)を合わせて,得られるのは,「円の面積=半径×円周÷2」であり,この言葉の式をもとにするなら,円の面積を求めるには「半径」と「円周」の2つが必要,だけれど「ゆうすけ」は,円周について話して半径については言及していないので不十分*1,と解釈できます。
 「ゆき」が正解になっていることについては,「円周÷2は,半径から直接求めなくても,与えられた円から測定すればよい」が考えられます。「半径から円周(またはその半分)を求めるのは既習だがその逆は未習だから」というのを理由にすると,これはこれで論争になりそうです。

 第5学年の大問2に,速さの問題がありました。表の下には「☆:平成29年度以前は第6学年にて実施」とあります。アンチはじきと同一問題ですが,前回(平成29年度)と比べて,(1)の正答率が8パーセントポイント,(2)では13パーセントポイントも低下しています。速さの公式の適用に限定することなく,算数で学習してきたことの違い*2が,この差に大きくかかわっているように思います。

*1:説明ではなく式における「不十分」な事例として、小学3年生のテストの答案に対し「式足りない」と赤で書かれたものが、今月、公開され論議を呼びました。3要素2段階の問題と見なせますので、「式足りない」として式に丸をつけないことに賛成です。https://twitter.com/ymdev0609/status/1719586775847596060

*2:この調査は年度末の実施となっており,6年の算数の最後に,さまざまな応用問題を解くことを経験していると考えられます。