かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

家庭向けの算数の本を読み比べ

 書店の「算数」の棚を見ると,小学校の算数教科書1冊分くらいの大きさと厚さで,6年間の算数を自習したり,家庭で教えたりするのに使うことが意図されている本が,何種類もあります。
 個別に購入して,当ブログやメインブログで紹介してきましたが,年始に7冊をまとめて購入し,読み比べてみました*1
 書籍は初版(第1刷)発行の古いものから順に並べています。箇条書きの各項目は,「キーワード:記述など(ページ番号)」の形式にし,カギカッコの中は本からの抜粋です。カギカッコが2重になっている場合には,外側は記事作成にあたり付けたもので,内側は原文通りとなります。出現ページ順です。書籍どうしの比較は,行っていません(あるキーワードがどの本に出現するか,しないかを知るには,ブラウザのページ検索機能を使ってください)。
 語句に関して,算数教育への批判と『小学校学習指導要領解説算数編』の記載,Ver.3をリリースをある程度,参照しましたが,「式に単位」*2など独自に設けたものもあります。

1. 一生使える“算数力"は親が教えなさい。

一生使える“算数力

一生使える“算数力"は親が教えなさい。

2014年7月27日 初版第1刷発行,2016年11月10日 第23刷発行。

  • 式に単位:「+-×÷の計算では、なぜ×÷を先に計算するのでしょうか?」の解説中に「200円×3個=600円」「200円+200円+200円」(p.40)
  • 円周率:「円周→直径×円周率(3.14)」「※円周率とは、円周の直径に対する値で「3.14」とします。」(p.49)
  • 倍数:「たとえば、2を1倍、2倍、3倍……していくと、それぞれ2、4、6……となります。このような整数の積を「倍数」といいます。」(p.64)
  • 速さ:「道のり」「速さ」「時間」によるみはじの図,「・道のり=速さ×時間」「・速さ=道のり÷時間」「・時間=道のり÷速さ」(p.77)
  • 割合:「○○○は□□□の何倍になるか」,○○○の下に「比べる量」,□□□の下に「もとにする量」(p.89),「もとにする量」が縦の長さ,「割合」が横の長さ,「比べる量」が長方形の面積となる「面積図」(p.90)
  • 食塩水の濃度:「濃度(%)=食塩の重さ(g)÷食塩水(g)」(p.98)
  • 比の値:「A:Bの比の値を求めるには「A÷B」」(p.102)

2. 小学校6年間の算数が1冊でしっかりわかる本

小学校6年間の算数が1冊でしっかりわかる本

小学校6年間の算数が1冊でしっかりわかる本

2015年10月19日 第1刷発行,2018年7月9日 第22刷発行。

  • さくらんぼ計算:「さくらんぼ計算のしかた」(p.8),「お子さんが「さくらんぼ計算」に慣れたら、「さくらんぼを書かずに、頭の中で考えて解いてみよう」と声をかけてあげてください。」(p.9)
  • 小数計算の0処理:「練習問題1(1)の筆算の結果は10.40となりました。このとき、答えにそのまま10.40と書かないように注意しましょう。小数第2位の0を消した10.4が正しい答えです。」(p.21)
  • 倍数:「8を整数倍(1倍、2倍、3倍……)すると、次のようになります。」「8 16 24 32 40 48 ……」(p.32)
  • 正方形:「授業で「正方形ってどんな形?」と聞くと、「4つの辺の長さが等しい四角形!」という答えが返ってくることが多くあります。しかし、これは厳密にいうと間違いです(「ひし形ってどんな形?」の答えとしてなら正解なのですが)。」(p.55)
  • 円周率:「円周率…円周の長さを直径の長さで割った数。円周率は3.141592…と無限に続く小数ですが、小学算数では、ふつう3.14を使います。」(p.64)
  • 速さ:「速さの3公式は、「み・は・じ」の図で覚えよう!」(p.92)
  • 割合:「「の」の前が、もとにする量」「~倍が、割合」「残ったものが、比べられる量」(p.96),「割合の3公式は、「く・も・わ」の図で覚えよう!」(p.98)
  • 比の値:「A:Bのとき、「A÷B」で比の値を求めよう」(p.106)

3. 小学6年分の算数をたった7日で総復習

小学6年分の算数をたった7日で総復習

小学6年分の算数をたった7日で総復習

2016年10月18日 初版発行。

  • 倍数:「倍数を考えるときは,倍数に0はいれない。また,0の倍数も考えない。」(p.8)
  • 正方形・長方形:「四角形の特ちょう」を表で整理(p.43)
  • 円周率:「円周率は,円周の長さが直径の何倍になっているかを表す数で,3.141592…と,どこまでも続く数です。小学校ではふつう3.14を使いますが,中学校ではπ(パイ)という文字を使って表します。」(p.48)
  • 二重数直線:「◎求める式を数直線を使って考えてみよう」(p.63)
  • 速さ:「速さ=道のり÷時間」(p.66),「道のり=速さ×時間」(p.67),二重数直線(pp.66-67),「数量関係の公式」(p.89)
  • 比の値:「a:bで表された比で,aをbでわった商が比の値です。」(p.74)

4. 10分で教える算数

【AERA Kids Book】10分で教える算数

【AERA Kids Book】10分で教える算数

発行 2016年10月30日。

  • 倍数:「4の倍数は? 4、8、12、16、20、…………」(p.19)
  • 割合:「比べられる量÷元にする量=割合」(p.56)
  • 速さ:「速さ=距離÷時間…時速4km=12km÷3時間」「時間=距離÷速さ…3時間=12km÷時速4km」「距離=速さ×時間…12km=時速12km×3時間」,「「はじき」の公式」,「四角形の面積図で速さ、時間、距離の関係をせつめいできる。」(p.58)
  • 式に単位:「360÷4=90(円)」「1200(g)÷100=12(g)」(p.66)
  • 正方形:ベン図(p.80),「共通点」「さまざまな四角形」を表で整理(p.81)
  • 円周率:「「円周」は直径×3.14」「円周は常に円の直径の3.14倍、つまり円周率=3.14です。よく子どもに教えてあげましょう。」(p.92)

5. つまずきやすいところが絶対つまずかない!小学校6年間の計算の教え方

2017年4月23日 第1刷発行。

  • さくらんぼ計算:8+6の「さくらんぼ計算」(p.15)
  • 式に単位:「6÷3=2㎡」「6(㎡)÷3(ℓ)=2(㎡)」(p.72)

6. 親子で学べてよくわかる小学校6年間の算数

親子で学べてよくわかる 小学校6年間の算数

親子で学べてよくわかる 小学校6年間の算数

2018年8月27日 初版。

  • さくらんぼ計算:「くり上がりのあるたし算は、数字の下にさくらんぼを書いて、10をつくるように数を分けるとよいです。」(p.10)
  • 倍数:「ある数を1倍、2倍、3倍…(整数倍)した数を、その数の倍数と言います。」「0は倍数には入れません。」(p.28)
  • 正方形・長方形:「特別な四角形の性質」を表で整理(p.67)
  • 円周率:「円周の長さは「直径×3.14」! 円の面積は「半径×半径×3.14」!」「どんな大きさの円も、円周の長さは、直径のおよそ3.14倍になります。つまり、円周の長さ÷直径=3.14… となり、この数を円周率といいます。」(p.74)
  • 平均:「合計」「平均」「個数」によるくもわの図(p.96)
  • 速さ:「速さの公式(き・は・じ)」「「き・は・じ」の図」(p.102)
  • 割合:「~倍が割合 比べる量÷もとにする量=割合」「■は●の■/●倍とおぼえよう」(p.104),くもわの図(p.106)
  • 二重数直線:「線分図をかいて理解を深める!」(p.105)
  • 比の値:「「a:b」のときの比の値は「a÷b」で求める!」(p.112)

7. 小学6年分の算数が3ステップで面白いほど身につく本

小学6年分の算数が3ステップで面白いほど身につく本

小学6年分の算数が3ステップで面白いほど身につく本

2018年12月13日 初版発行。

  • 倍数:「4の倍数」「4 8 12 16 20」「4×1 4×2 4×3 4×4 4×5」「4×整数であらわせます」(p.30)
  • 円周率:直径1cmの円をもとに「3.14=1×3.14」「円周=直径×円周率」(p.66)
  • 割合:「割合の文章で、~は…のどれだけ(何倍)ですか?」(p.76)、面積図(p.78)
  • 比の値:「「A:Bの比の値は?」と聞かれたら、「AはBのどれだけですか?」という割合を聞いていますからA÷Bで計算します!」(p.86)
  • 速さ:「道のり=速さ×時間」「速さ=道のり÷時間」「時間=道のり÷時間」(p.100),「みちのり」「はやさ」「じかん」による「みはじ」の図(pp.100-101)

少しだけコメント

 今回整理しきれませんでしたが,目次のすぐあと,「最初に何を学ぶか」が,バリエーションに富んでいました。
 「比の値」は,1冊を除いてすべてa:bならa÷bでした(大文字・小文字の違いはありましたが)。倍数に0を入れないのも,明示しているか否かは別として,確定と思っていいでしょう。
 その一方で,低学年の「演算の意味」,具体的には2年の「かけ算の順序」関連や,1年の増加と合併,3年の等分除・包含除(それらの区別)を書いているものは,今回読んだ7冊にはありませんでした。
 省略の「…」の表記について,数学のように気を配っている*3ものはないな,とも感じました。

*1:たとえばhttp://d.hatena.ne.jp/takehikom/20160618/1466249367で紹介した本は,今回,棚に見かけなかったため対象外です。

*2:関連:http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20130428/1367096291

*3:TeXでいう\ldots,\cdotsのことです。