かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

正しい式はどっち

 算数で,2つの式を並べて比較する事例は,いろいろと読んできましたが,次の問い方は初めて見ました(p.64; 引用にあたりいくつか表記を変更しています)。

【問題】下のように●と○が並んでいます。全部でいくつあるかを求めるとき,(あ)と(い)の式はどちらも正しいですか。

●●●●○○○○○
●●●●○○○○○
●●●●○○○○○

(あ) 3×4+3×5
(い) 3×(4+5)

 ポイントは,「どちらが正しいですか」ではなく「どちらも正しいですか」と問うところです。実際のところ,(あ)も(い)も,●と○の総数を求める式になっています。
 ただし,該当ページではどちらか一方が正しい,両方とも正しいという展開よりもむしろ,この問題をどのように出題することで,子どもたちの「学習意欲と必要感」を引き出せるかを重視しています。
 関連情報を2つ挙げておきます。啓林館 算数用語集の式表示と式のよみでは,碁石(黒石と白石)を並べた写真と,3つの式を示してから,「上の3つの式は,それぞれ下のどの図で考え方ものですか。」と出題しています。右分配則に基づいています(それに対し,上記の●と○の並びは,左分配則です)。
 わり算が用いられる場面で,「12÷4」と「12÷3」を示して「どちらが正しいでしょうか。」と問い,「どちらも正解」という授業を,『算数科「問題解決の授業」に生きる「問題」集』*1より読むことができます。その本の編著者の一人,相馬一彦氏は,『子どもが主体的に考える!はじめての算数科「問題解決の授業」』に「刊行に寄せて」を書いています。