かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

令和7年度数学教科書読み比べ(4)~a÷b×c

 「令和6年2月16日検定済」で来年度より使用される中学校第1学年の数学教科書(見本)について,「乗法の除法と混じった式」の事例を紹介します。数値は教科書によって異なりますが,式はa÷b×cの形で始まり,a÷b×c=a÷(b×c)と計算してはいけない,というものです。

東京書籍 新編 新しい数学1~MATH CONNECT 数学のつながり~

  • p.51: 問8 右に示した計算はまちがっています。どこがまちがっていますか。また、正しく計算しなさい。
    • ×まちがい例 \displaystyle28\div\frac{7}{10}\times(-2) = 28\div\left(-\frac{7}{5}\right) = -20
  • p.51: 乗法と除法の混じった式は、乗法だけの式になおして計算することができる。

学校図書 中学校数学1

  • p.46: 乗法と除法の混じった計算は,乗法だけの式に直して計算するとよい。
    • 例5 \displaystyle 4\div\left(-\frac{6}{7}\right)\times(-9) = 4\times\left(-\frac{7}{6}\right)\times(-9) = +\left(4\times\frac{7}{6}\times9\right) = 42

教育出版 中学数学1

  • p.55: 乗法と除法の混じった式は,乗法だけの式に直して計算することができる。
    • 例題1 (2) \displaystyle 14\div\left(-\frac{7}{3}\right)\times3
    • ×まちがい \displaystyle 14\div\left(-\frac{7}{3}\right)\times3 = 14\div(-7) = -2

啓林館 未来へひろがる 数学1

  • p.40: 乗法と除法の混じった式では,乗法だけの式になおし,次に,結果の符号を決めてから計算することができます。
  • p.41: 右の(-36)÷(-3)×2の計算は,どこに誤りがありますか。また,正しくするには,どのように計算すればよいでしょうか。
    • × 誤答例 (-36)÷(-3)×2=(-36)÷(-6)=6

数研出版 これからの数学1

  • p.47: 乗法と除法の混じった式は,除法を乗法になおして計算できる。
    • \displaystyle4\div\frac{2}{5}\times\left(-\frac{3}{5}\right) = 4\times\frac{5}{2}\times\left(-\frac{3}{5}\right) = -\left(4\times\frac{5}{2}\times\frac{3}{5}\right) = -6

日本文教出版 中学数学1

  • p.43: 乗法と除法の混じった式の計算について学びましょう。
    • \displaystyle2\div(-3)\times(-18) = 2\times\left(-\frac{1}{3}\right)\times(-18) = +\left(2\times\frac{1}{3}\times18\right) = 12

大日本図書 数学の世界1

  • p.53: 乗法と除法の混じった式は,乗法だけの式にすると,乗法の交換法則や結合法則を使って計算することができます。
    • Q1 Cさんは,右のように計算しました。この考えは正しいですか。\displaystyle(-6)\div\frac{3}{2}\times(-4) = (-6)\div(-6) = 1

振り返って

 どの教科書も,式はa÷b×cの形で始まるのに加えて,共通点があります。a,b,cのうち一つまたは二つが負の数です(いずれにも負の符号がなければ,小学校の算数の範囲で可能な計算になるのですが)。
 そして,aは整数となっていました。bとcは,以下の通り,分かれました。

 推測ですが,aを整数にすることで,a÷b×cのうちb×cを先に計算するという誤誘導を促すように見えます。
 最後に,複数の教科書(東京書籍,教育出版,啓林館)で,間違いを意味するバツ印を使用していました。乗法の記号「×」と,色や字形で異なる表示になっていました。