かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

二重数直線って,何ですか?

Q: 二重数直線って,何ですか? 何ができますか?

 2本の数直線を対応づけて,数量の関係を表すための図式です。

 比例関係(一方が2倍,3倍,...になれば,それに伴って他方も2倍,3倍,...になるような関係)を図示するのに有用です。
 小数や分数のかけ算・わり算の問題を,筋道を立てて解けるようになり,演算決定(立式)の根拠を示すことができます。


 『数学教育学研究ハンドブック』の第3章(教材論)§2(演算の意味・手続き)では,いくつか文献を紹介したあと,次のように総括しています(pp.76-77)。

 数直線に関する先行研究を踏まえると,数直線を用いた乗法・除法の演算決定における教育的な役割には次のものがあるといえる。
 ① 立式の根拠となる。
 ② 意味の拡張ができる。
 ③ 計算の仕方を導くことができる。
 ④ 積や商の大きさを見積もることができる。
 ⑤ 基準量変更で乗除法を統一的にみることができる。
 これらは,互いに関連がある。特に,①と②は乗除法の意味を数直線で捉えることによって,立式の根拠となると同時に変数が小数になったときに意味の拡張ができることになる。また,③と⑤も関連する。分数の除法の指導では,逆数を用いて乗法として統一する。そのとき,逆数をかける意味を数直線で説明することができるからである。

 「意味の拡張」については,[中島1968a][中島1968b]が背景にあり,これらの文献は現在,J-STAGEを通じて無料でPDFファイルをダウンロードできます。また『算数・数学教育と数学的な考え方』の第2章で,図を交えて解説されています。なお,中島の文献では,数直線は2本ではなく,1本の線の上下に目盛りをとって対応付けています([岸本2010]に見られる「1971年の教科書での比例数直線」も同様です)。