かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

全部かけ算とはかぎらないよ

筑波大学附属小学校田中先生の 算数 絵解き文章題 (有名小学校メソッド)

筑波大学附属小学校田中先生の 算数 絵解き文章題 (有名小学校メソッド)

 かけ算の学習のところで,かけ算でない場面が交じっています。具体的にはp.84の「かけ算⑥」で,問題は以下のとおりです。
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かけ算⑥
 このページの解説は,p.137にあります。たし算を入れているのは,意図的なのです。

アドバイス 前回は,「1つ分の数」→「いくつ分」の順に数字が出てくる文章題(Aパターン)と「いくつ分」→「1つ分の数」の順に数字が出てくる文章題(Bパターン)を織り交ぜましたが,今回はさらに,たし算のパターンを織り交ぜて提示しています。
 また,図の表し方も,前回より抽象度を増しています。
 お子さんには,どのようなタイプの文章題に対しても,問題文を読んで場面のイメージをしっかりつかみ,図に表せるように指導してください。

 関連するのは,2009年に出版された『田中博史の算数授業のつくり方』*1です。田中先生が,小学校の先生方に対して話しています(p.62).

次に,文章題指導の話をします。
1・2・3年生の学習では,文章題が非常にたくさん出てきます。低学年のうちは,子どもたちは簡単だと勘違いして,得意になっているようですが,実は,高学年になって算数ができなくなる子の多くは,低学年から考えることをしていなかった子に多いのです。
実は,低学年時代は,考えなくても正解になってしまう問題が多いのです。たし算のときはたし算ばかり,ひき算のときはひき算ばかりです。子どもたちは何も考えなくても,文章題は○になります。市販のテストには「たし算」とタイトルが書いてあります。そこに出てくる文章題がたし算以外のはずはないんです(笑)。
このような体験ばかりしてきた子どもたちが,高学年になってだんだんわからなくなっていくのは,小さい頃から,考えることをさせてこなかった授業に原因があると考えています。そこで私は,子どもたちが今,算数の授業に学んで出会う文章,それから絵,図や表やグラフ,式,こういったものを,大人がどのようにしてイメージしてリンクさせていくのかを考えました。(以下略)

 なお,「かけ算⑥」の画像のうち,左下の「3つの箱に」から始まる文章題について,右上の点と結ぶのはいいとして,式を「3×4=12」と書くことは期待されていません。というのも同書のpp.72-73では,「一つ分の数×いくつ分=全部の数」が記載されており,これに沿ったかけ算の式は「4×3=12」となります。
 今回の内容は,かけ算の学習の中に,かけ算以外の場面を入れて,それぞれ適切に演算の決定ができるようにするという実例と言えます。また別の学習形態として,情報過多・情報不足の問題を提示して子どもたちに考えさせるというのも,知られています。以下のページに教科書の画像のほか,解説文には「情報過多(条件過多)の問題」「情報不足(条件不足)の問題」という表記を見ることができます。