かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

2022/07/04に公開の動画


 動画タイトルのうち,「どっちがどっち」というのは,学習塾(個別指導教室)「数理教育研究会」による他の動画でも見られます。動画は,数理教育研究会代表 茶谷英明氏(画面左)と,教務責任者 畠田和幸氏(画面右)とのやり取りで構成されています。語りの大部分は茶谷氏です。後方にホワイトボードも見えますが,何か書いたり,掲示したりはしていません。
 重要に思えた時点(分:秒)と発言内容をいくつか並べます。

  • 1:04ごろ「これってあのまあ,2段階で話せるかなあと,思うんですけど,まずは,算数・数学として,その掛け算の順序には意味があるのか,っていうこと,と,じゃあそれをテストに出して,それをペケにしていいのかどうか,っていうことですね」
  • 2:07ごろ「一皿にチョコレートを3個ずつ盛っていきますと,それが5皿あった場合,チョコレートは全部でいくつありますか,ということなんだけど」
  • 2:52ごろ「だからこれ普通はですね,恐らく低学年では,3×5ってやる前に3個乗っている皿を5個書いてみなさい,みたいなとこからスタートするはずなんですよ。だから,式になる前に,絵の式,まあ図形式みたいな感じで図の式,がまずあって,それを式に直しなさい,ていうことになるので,3×5って書くのが自然じゃないかというのが,まあ,学校の先生方の考え方と言おうか,これあの,大抵の恐らく,低学年を教えている学校の先生方からは指示されている,と思いますね」
  • 3:31ごろ,「で,まあ,一応ですね」から始まるのはトランプ配り。
  • 5:09ごろ,畠田氏が「非可換と言って」から始まり,行列に言及。
  • 5:58ごろ,「じゃあこれテストで順番逆にしてペケにすることはどうだ,ということなんですけども,これはねえやっぱり,テストの種類にも依ると思います。だから,これが何かの実力テスト,範囲とか決まっていなくて,実力テストにいきなり出てきたら,3×5でも5×3でも,丸にしたほうがいいのかな,っていう気がしますね」
  • 6:45ごろ,「これ掛け算って書いたらヒントになっちゃうけど,注意しなさいとか」
  • 9:09ごろ,畠田氏「やっぱり立式には意味がある」「立式の時には順番が意味があるという風にやっぱり高校数学であっても,やっぱりあると思いますね」
  • 11:03ごろ,畠田氏「そしたらまとめると」

 動画で言及がなく,視聴して思い浮かんだのは,「実力テスト」ではなく,公開されている外在的評価,具体的には東京都算数教育研究会の学力実態調査の第2学年の問題です。
 公開されている中で最新は,平成30年度実施分です。大問3では,最初の小問では問題に合う図を3つの中から選ばせ,次の小問では式を書かせています。かけ算で式に表せる場面ですが,「4×3」のほか,たし算の「4+4+4」を正解扱いとしている一方で,かけられる数とかける数を反対にした「3×4」は誤答とされています。また大問5では,L字型アレイを提示して「かけざんを つかって」と指示し,求め方(しき・こたえ)を「2つ かきましょう」という問題にしています。
 もう一つ,気になったのは,出題における値の出現の順序のことです。動画の内容をもとに,以下のように2種類,文章題と児童の反応を考えることができます。

  • 「一皿にチョコレートを3個ずつ盛っていきますと,それが5皿あった場合,チョコレートは全部でいくつありますか」という文章題に対し,「5×3」という式を書く児童
  • 「皿が5皿あります。一皿にチョコレートを3個ずつ盛っていきますと,チョコレートは全部でいくついりますか」という文章題に対し,「5×3」という式を書く児童

 後者のように,文章題で「5」が先,「3」が後に出現するけれども,(日本の小学校の算数で)正解となる式は「3×5」であり,「5×3」は間違いとなっているのは,かけ算の順序を問う問題 - わさっきhbで収集を図っています。宮田ら(2011)の総合考察に書かれた「かけ算の問題は,全体量=ある数×他の数という式に基づく」も,関連します。
 それに対し前者のように「3個ずつ」「5皿」で,「5×3」と式に表すのは,レアケースとなります。書籍で思い浮かぶのは『算数子どもの考え方・教師の導き方 2年』くらいです。
 動画をみて記事を書いたのは,2021/12/27に公開の動画以来です。今回の動画で,「森(毅)先生」「立式には意味がある」といった字幕を見かけましたので,これらを含むかけ算の「順序」について(2017.12)にリンクしておきます。