かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

子どもが身に着けるべき算数・数学の学力とは~『教育評価重要用語事典』を読む

 今年出た本です。編著者(西岡加名恵・石井英真*1)について,『新しい教育評価入門』の編者3名のうち2名と同じです.残りの1名(田中耕治)も『教育評価重要用語事典』の執筆者に入っており,「1 教育評価/学習評価」「2 教育評価の歴史」などを担当されています。
 「160 算数・数学科における評価」はp.192で,執筆者は大下卓司です。「算数・数学科における学力とは何か」の小見出しのあと,最初の段落は次のとおりです。

 算数・数学科は,国内外の学力調査をはじめ,測定可能な学力として位置づけられてきた。算数・数学の多くの問題は表現が簡潔であり,かつ,その解答が一意に定まることが多い。例えば,計算問題や文章題のように答えが一つに絞られる問題がその典型である。しかしながら,現代社会において,子どもが身に着けるべき算数・数学の学力とは,こうした問題から評価できるのだろうか。

 上の内容,また同ページのあとの記述に基づくと,「ペーパーテストで何問正解したか」を,「算数・数学の学力」と見なすのは不適当という主張であるように見えます。
 そこで次のような問題意識を持つことにします。ペーパーテスト,またはインタビュー調査(その場で問題を解かせて観察すること)を通じて,難しい問題を解くことができれば,学力が高い,または十分な学力が身についたと見なしてよいか,です.
 これに関しては,同ページに「子どもが知識・技能を使いこなし,思考・判断・表現する場面をカリキュラムに位置づけ,そこでの学習を評価する必要がある」と書かれていました。評価の方法に依存するところではありますが,問題の難易度に応じた学力判定は,可能と読めました。
 なお,本文では「評価できるのだろうか。」の答えとして,「オープンエンドアプローチ」を挙げています。「一つの答えを見つけて終わりではなく,考え方だけでなく,答えが複数あり,子どもが考え続けることができる問題をオープンエンドの問題という。」と述べ,これに先立って「九九表から,きまりを見つける場面」を例示しています。
 このページを読んで,思い浮かんだ当ブログの記事を並べておきます。

 オープンエンドの要件を満たしませんが,答えが複数ある問題は,正答率や出題意図と合わせて,東京都算数教育研究会が実施してきた学力調査より読むことができます。平成30年度では,第1学年大問5(□-□=9を2つ)と第2学年大問5(L字型アレイ)です。

*1:本記事では人物名はすべて敬称略とします。