小学校の算数,とくにかけ算の指導において「アレイ」は,同一のものを,長方形のように配列してできる形態をいい,その総数を求める式として(縦と横の数が異なっていれば),縦×横と横×縦という,2つの式を考えることができます。
しかしながら小学校の算数の教科書では,そのような,かけられる数とかける数とを交換した式をつくる(2つの式が,いずれも,その場面を表した式である)ことが,重要視されているようには見えません。
「長方形」の並びのかわりに,個人的に「L字型」と呼んでいる並びについて,いくつかの式を書いたり,なぜその式になるかを読みとったりするのに,活用されています。
「平成31年3月5日検定済」で来年度より使用される,6社(教育出版,東京書籍,啓林館,日本文教出版,学校図書,大日本図書)すべての算数教科書の2年で,見ることができました。表示も,式も,さまざまです。数える対象を青丸で統一した画像*1にし,教科書に記載された出題文と式をテキストで添えました。
教育出版 小学算数2下
- p.39: 牛にゅうは何本あるでしょうか。
- 2×4=□ 3×□=□ □+□=□
- 5×8=40 2×4=8 40-8=32
- 4×8=32
東京書籍 新しい算数2下
- p.43: はこの 中の チョコレートは ぜんぶで 何こ ありますか。いろいろな もとめ方を 考えましょう。
- 3×3 5×〔えんぴつの絵〕
- 3×2=6 6×3=18 6+18=24 答え 24こ
- □×□=24 答え 24こ
- 5×6=30 2×3=6 30-6=24 答え 24こ
啓林館 わくわく算数2下
- p.38: はこの 中に,チョコレートは 何こ ありますか。
- 5×2=10 3×3=9 10+9=19 19こ
- 5×5=25 2×3=6 25-6=19 19こ
日本文教出版 小学算数2下
- p.50: いろいろな 考え方で,ボールの 数を もとめましょう。
- 4×3=12 2×2=4 12+4=16 答え 16こ
- 4×□=16 答え16こ ボールを 2こ うごかして 考えました。
- 4×□=20 20-□=16 答え16こ はこ いっぱいの ところから,ボールを 4こ とりだして 考えました。
学校図書 みんなと学ぶ算数2年下
- p.44: チョコレートは ぜんぶで 何こ ありますか。九九を つかって,くふうして もとめましょう。
- 6×4=24 3×2=6 24+6=30 答え 30こ
- 3×4=12 3×6=18 12+18=30 答え 30こ
- 6×6=36 3×2=6 36-6=30 答え 30こ
- ゆいさんの 考え〔右端の3個を,一つ左の列の上部に移動〕ゆいさんの 考えを しきに あらわすと どうなるかな。
大日本図書 楽しい算数2年
- p.195: 右の チョコレートの 数を もとめましょう。
- 5×6=30 2×3=6 30-6=24
- 6つの まとまりが できるように うごかして,6×4=24
- 1つの しきで もとめる ほうほうは ほかに ないかな。
読み比べ
- 東京書籍と大日本図書が同じ並びでした。
- もとの一部分で,長方形配置の数を求めるときのかけ算の式は,例外もありますが基本的には縦×横でした。
- 東京書籍の2番目の式と,大日本図書の2番目の式は,横×縦に見えます。いずれも,横長に囲った状況をもとに,「1つ分の数」と「いくつ分」を得て式にしていました。
- 啓林館の出題の総数は19個ですが,a×bという1個のかけ算の式で求められないようにした,意図的な設定と思われます。残りの5社については,並べ替えることで,九九の範囲の1個のかけ算の式で表せます。
教科書以外から(1)
また大問5(L字型のアレイ)のExcelファイルでは,「3×10」「5×6」「6×5」「2×15」は正解とする一方,「1×30,30×1は、乗法の式になっているが数えていると考えられるので、正答としない。」という指示があります。これまで,そういった答えが事務局にフィードバックされてきたからと想像できます。
500-(x×80)は間違い
教科書以外から(2)
- 髙木恵美子: 学ぶ意欲を高め,思考力・表現力を育む算数的活動の工夫―複雑なアレイ図から多様な考えを引き出す「かけ算」の実践―, 教育実践研究, 上越教育大学学校教育実践研究センター, Vol.27, pp.49-54 (2017). http://hdl.handle.net/10513/00007367
- 『小学校新学習指導要領の展開』に見る,L字型アレイの5つの式
- アレイ図 (2015.12) - わさっきhb(4.4 L字型)
*1:はてな記法 http://help.hatenablog.com/entry/text-hatena-list のpre記法では(言い換えると文字で各場面を表現するのは),記号類が等幅でないらしく,表示が乱れます。