算数教科書をそのまま,またはアレンジして授業に活用しましょうという本です。序章(教科書はこう使え!)のあと,1章から6章までが各学年の実践例で,7章はQ&Aです。
教科書会社の明記はありませんが,書籍の出版社と同じ,学校図書と思われます。編集者一覧*1には尾﨑,木下,樋口の3氏の名前*2があるほか,p.204の「ヒトッツ*3」から始まる9つのキャラクターは,https://gakuto.co.jp/2020s_tokusetsu/webpamph/sansu-3.htmlに記載のものと同一です。
2章(実践例2年)に,かけ算の授業例が載っていました。単元は「かけ算(3)」,内容は「九九のきまりをみつけていかそう」で,pp.71-76です。
教科書に載っているという九九の表は,(2×2=)4,(5×6=)30,(8×2=)16の3箇所だけ,積が書かれていて,残りは空欄です。この4のところから,先生と児童とのやりとりが始まります。
「かけ算の順序」もしくは「乗法の意味」の観点で,取り出すなら,p.73の最上段でしょう。
前後を含む会話(pp.72-73)は次のとおりです。
(先生)表に載っている4は何×何ですか?
(児童)2×2。
(先生)どうして,2×2って分かるの? 4になるかけ算は何箇所かあるでしょ?
(児童)何か所かあるけど,この4は2に2がかけられるところだもん。
(先生)この式は2×2なんだね。じゃあ,2×2のどっちの2がかけられる数,かける数かな?
(児童)最初の2がかけられる数,後の2がかける数です。
(先生)そうだね,じゃあ,4になるかけ算はあと何箇所ある?
(児童)2箇所!
(児童)1×4と4×1がある。
(先生)表の1×4と4×1のところに4を書いてごらん。
2×2の式においても,乗算記号の左と右の数は,異なるものを表すことを,児童に発言をうながし,引き出しています。
実際のところ(授業で教えるかどうかはさておき),九九の表は,かけられる数を行(1の段,2の段,...,9の段),かける行を列として,表示されています。行が基準となるのは,基準量(2年の授業で出現する用語ではないですが)に対応づけられますし,九九から離れて,総当たり戦の表においても,行のプレイヤー(またはチーム)から見て,列のそれぞれとの勝敗を書く,という慣例と関連するわけです。
授業はそのあと,九九の表を埋めて,きまりを発見(まずはノート,次に付箋に記入)させています。きまりの発表(p.76)には,「ひとりぼっち*4」「数が向かい合っている」「鏡のようになっている」というのがあります。教科書を開いて性質を比較して,この授業の内容はおしまいです。
学習指導要領(小学校算数)のうち「一つの数をほかの数の積としてみること」それと「乗法九九について知り,1位数と1位数との乗法の計算が確実にできること」と深い関係のある授業でした。
他のページでは:
- 以前より関心を持っている「だんの数とまわりの長さ」*5について,授業の展開が書かれており,15段のまわりの長さを求める式では「4×15=60」「15×4=60」のいずれも認められています(p.138)。
- ノートに関するQ&Aの中の,「3×8=3×7+3といった表現ができるようになると,「3×8の答えは,3×7の答えに3をたした答えと同じになります」という表現よりずっと早く,簡潔に自分の考えを書くことができます。」(p.217)には納得です。
- 「2年上P.58~59」という,この本ではp.206上段の教科書見開きにおいて,片方のページだけでひよこは100を超えているのは分かりますが,2ずつ・5ずつ・10ずつ・100ずつに分けないと(目視だけでは),ひよこの匹数を求められそうにありません。