かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

2020年のツイートの,配る問題


 Togetterの通知でhttps://togetter.com/li/1590625を知りました。takehikomによるツイートがいくつか載っていましたが,むしろ関心を持ったのは,冒頭のツイートです。
 ツイートに貼りつけられている2つの問題文は次のとおりです。

 りんごがたくさんありました。
 人が4人いたので りんごを1こずつ配っていったら 3個ずつ配れました。
 りんごはいくつありましたか。

 りんごがたくさんありました。
 たくさんあったので 3個ずつ配ったら 4人に配れました。
 りんごはいくつありましたか。

 ツイートされた方は,前者(4人に3個ずつ)にはトランプ配りを適用して「4×3=12」の式を,後者(3個ずつ4人に)には「1つ分の数×いくつ分=ぜんぶの数」をそのまま当てはめて「3×4=12」の式を,対応付けています。
 とはいえ数量の関係として「4人に3個ずつ」と「3個ずつ4人に」は同じ場面と言えますし,配り方が異なってもかけ算の式は同じ(上記の場合は3×4=12)となるのは,2×3? 3×2? どっちでもいい? ~配る問題,かけ算の順序~ Ver.4で,小学1年の問題と,2011年の出版物をもとに,整理してきたとおりです。
 ところで上記の問題文では,「りんごはいくつ」の答えが「12個」以外も認められるように読めます。
 前者(4人に3個ずつ)について,13個も,題意を満たします。4人に3個ずつ渡して,残り1個は,「4個ずつ」配ることはできなかったので「あまり」となります。
 同様に,14個,15個も,認められることになります。16個になると,「4個ずつ」配れますので,題意を満たしません。
 式で表すと次のとおりです。

  • 12÷4=3
  • 13÷4=3あまり1
  • 14÷4=3あまり2
  • 15÷4=3あまり3

 それに対し後者(3個ずつ4人に)も,12個のほか,13個がOKです。3個ずつ4人に配ることができて,「あまり」が1個です。14個もOKです。15個は,3個ずつ「5人」に配れてしまうのでNGです。
 式は次のとおりです。

  • 12÷3=4
  • 13÷3=4あまり1
  • 14÷3=4あまり2

 このように考えると,2つの文章題で結果(想像可能な場面)が異なると言えます。*1
 算数教育の用語を用いると,前者は等分除,後者は包含除で,そこに「あまりのあるわり算」を組み合わせた形となります。等分除に対するトランプ配りは,トランプ配りの乗法への適用~書籍からでまとめてきた内容に,「2017年に公表された『小学校学習指導要領解説算数編』では,トランプ配りの乗法への適用について書かれたが,その手続きを採用している算数教科書はない」という情報を付記すれば十分でしょう。

*1:それぞれの問題文の「配れました。」を「配って,りんごがなくなりました。」に書き換えると,12個になります。かけ算なら式は3×4=12ですが,前者は□÷4=3,後者は□÷3=4です。