かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

令和2年度教育課程研究指定校事業研究協議会より


 「2021/08/16」公開の動画ですが,開催そのものは令和3年(2021年)2月です。日程や研究指定校,PDFや他の時間帯の発表の動画は,以下より知ることができます。

 動画を観て,https://twitter.com/takehikom/status/1427177686762344451より始まるツイートをしていました。いくつかの発言を,文字にしてみました。それぞれの引用の先頭のリンク先は,動画の該当箇所(時分秒)です。

(45:25ごろ)
発表する児童「まず,この,1を0.6にするには(二重数直線の下に矢印と「×0.6」をかく)で0.6をします」
他の児童「はい」
発表する児童「そうやったから,これも同じように(二重数直線の上の600とyの間に矢印と「×0.6」をかく)で0.6をします」
他の児童「はい」
発表する児童「それから,この,600×0.6というかけ算の式になるのだと思います」
他の児童「わかりました」

(59:20ごろ)
本校の研究の成果と課題について,説明します。
尾道市内の6年生で実施した,令和2年度全国学力・学習状況調査において,算数全体では,86.5%を達成することができました。割合の学習に関連する問題の正答率に着目していくと,結果はご覧の通りです。
全学年において,問題の内容を適切に立式できた児童は,取り組み前は85.6%でしたが,取り組み後は,96.5%になりました。また,その図を使って,適切に立式し,立式の根拠を適切に説明できた児童は,79.7%から,84%になりました。
過去の全国学力・学習状況調査を活用して検証を行いました。この問題の自校平均は82.6%です。
同様にこの問題では,自校平均が65.2%となりました。
同様にこの問題では,自校平均が76%となり,取り組みの成果が現れています。
しかし,これから示す2つの問題では,全国の平均を上回っているものの,あまり,成果が出ていません。
この問題の自校平均は,43.4%です。
2つめのこの問題の自校平均は,32.6%でした。

(1:08:03ごろ)
では,続いて,系統表についてなんですが,「等しく」を強調しすぎない,っていうことなんですが,福岡教育大学の岩田先生に,ちょっとこれは研修で教えていただいたことなんですが,等分除の学習の際に「わり算というのは等しく分けることなんだよ」っていうことをあまり強調しすぎると,4年生,5年生の,小数のわり算とか,というものに移行したときに,今まで等しく分けるものをわり算だって,こう,認識が強く残っていると,1あたりを,1つ分の1あたりを求めているものがわり算なんだっていうのが,難しくなってしまいます。
それを,少しでもその,移行の,移行したときのハードルを,低くするために,3年生のうちから,最初の,問題がその,場面が許可したりするときに,等しく分けているね,こういうのがわり算だっていうんだよっていうふうに学習するのは,とても大事なことなんですが,そこばっかりをずっと強調していると,小数のわり算に行ったときに困ることがある,というのを,勉強させていただきましたので,3年生の段階でも最終的には1つ分を求めるときにわり算を使うんだよっていうことを,どこかの段階で押さえる必要があるっていう認識で,モジュールの系統表に,ああすみません,系統表のほうに,等しくを強調しすぎないということを,書かせていただいております。

(1:36:08ごろ)
すみません,じゃ比について,ちょっとお答えします。どうして,比の学習で単位量あたりを扱ったかということなんですが,中学校の先生と,教材研究を一緒にしたんです。そしたらね,中学校では,その単位量あたりとか割合とかいうのは,比を使って,いろんな問題するよっていうような考えがありました。実際,分数のわり算とか,速さも,比で解くよ,っていうふうにおっしゃってたので,じゃあ,単位量あたりと,比を,つないで,子どもたちが同じ考えだ,どっちも使えるよ,どの考えでも解けるよ,ていうふうにしたら,子どもたちが場面によって,得られるんじゃないか,ていうふうに考えたんです。ですので,単位量あたりの考えを引き出して,関連付けるという,取り組みをしました。以上です。


 2番目(等分除)について,『復刻版 算数・数学教育と数学的な考え方』*1のp.14に,同じ趣旨のことが書かれていました。

なお,等分除は,かりに整数の場合には,4等分,6等分など具体的に考えやすいとしても,小数,分数の場合には,たとえば,3.2等分,\frac57等分という見方は困難である。それで,さきの問題のような等分除といっても,「等分する」という見方からはなれて,1人分とか,下の図式で,1に相当する大きさ(□)を求める計算である(32÷4の図式:図省略)としての見方を,はっきりもたせておくことがだいじである。

 3番目のうち,単位量あたり(異種の二つの量の割合)でも比を使うというのは,以下の件と関係しそうです。

 動画内では「比」と言っていましたが,「中学校では比で解く」というのは,「比例式」ではないかと思われます。例えばhttps://www.slideshare.net/takehikom/2021820/40の「4.2kmの道のりを,時速2.8kmで歩きました。着くまでに何時間歩きましたか。」に対しては,求めたい時間をx時間とし,「時速2.8km」を「1時間で2.8km」に読み替えれば,4.2:x=2.8:1として比例式で表せます。2.8x=4.2から,x=4.2÷2.8=1.5により求めることができます。なお「比例式」は,小学校学習指導要領には見当たらず,中学校学習指導要領の数学の第1学年に「簡単な比例式を解くことを取り扱うものとする」が入っています。