かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

4×10と10×4,答えは同じだけど,見方・考え方は違う

  • 青山尚司: 式を読むことで,見方・考え方を共有する, 算数授業研究, 東洋館出版社, No.140, pp.58-59 (2022).

 「階段の形の周りの長さ」の授業です。当ブログでは,段数×4=周りの長さで最初に取り上げ,昨年の(筑波の算数の田中英海氏による)授業は,(1つ分)×(いくつ分)=(全体)で解釈できない式を認められるのか~「変わり方調べ」の授業事例で紹介しています。筑波の算数以外の情報源としては,『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説算数編』のhttps://www.mext.go.jp/content/20211102-mxt_kyoiku02-100002607_04.pdf#page=236と次のページを見ておくといいでしょう。
 青山氏が実施した授業については手短に述べます。10段のときの周りの長さを表す式として,まず「4×10」が出て,他の児童が「式は10×4=40だと思います」と発表し展開していきます。「0段」というのは,階段の形の周りの長さの,他の授業にない検討であるように思われます。
 授業のあとの著者の振り返りの中で,かけ算の順序のイエスバットが書かれていました(p.59)。最初の[5]は原文では黒塗り四角形に白抜きの5です。

[5] 2つの式からみえる見方・考え方
 自力解決時に「4×10」という式を立てた多くの子たちはノートに表を描いていた。段数に伴って変化する周りの長さの増え方を明らかにしようと考え,4ずつ増えているというきまりから式化したのである。本時は変わり方調べの第3時である。この子たちは,前時までの学習で表のよさを実感し,使おうとしていたことが分かる。
 これに対して,「10×4」とした子たちは階段の形に着目して,辺を移動させても周りの長さは変わらないことを見いだし,正方形に変形することで1辺の長さを4倍すれば周りの長さになることから式化したのである。
 乗法は被乗数と乗数を反対にしても積は変わらない。しかし,2つの式からはそれぞれ異なる解決方法が見えてくる。「4×10」と「10×4」では,子どもたちが働かせた見方・考え方が異なっている。集団で式を丁寧に読むことは,その式を立てた友達の見方・考え方を全員で共有する互恵的な学びにつながる。

 この文章やこれまで読んできたものを総合すると,10段のときの周りの長さを求める式として,「4×10」も「10×4」も認められると判断してよさそうです。その上で,テストなどを通じた理解度の確認や,さらなる学びが,期待されています。今年度検定,来年度採択(教科書展示会を通じて検定済教科書の閲覧の機会も),再来年度から使用となる,小学校の教科書が,どのようになるのか,折々に見ていくことにします。


 本号(算数授業研究 Vol.140)には他のページにも,「階段の形の周りの長さ」の話が図入りで取り上げられていました。著者・題目・ページ番号を挙げておきます。

  • 清水紀宏: 算数科における個別最適な学びと協働的な学びの充実を目指して, pp.16-19.
  • 青山尚司: 「学力の個性化」は協働的な学びの中で段階的に, pp.36-37

 本記事のタイトルに興味を持った方は,3×4と4×3,答えは同じだけど,意味は違う(令和2年版)をご覧ください。