かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

変わり方~都算研と算数授業研究より

 東京都算数教育研究会の令和3年度研究委員会研究紀要には,第4学年「変わり方調べ」の検証授業が入っていました(pp.14-21)。
 図の作り直し~段数と周りの長さの関係の件です。以下で「求め方①」「求め方②」「求め方③」は,いずれもこの記事の番号です。
 検証授業に話を戻すと,本時では,1段の高さ(単位正方形の1辺)を,1本の棒に対応付けた上で,「階段を20段作る時、棒は何本使うでしょう。」という問題について自立解決を促し,考え方を出し合って授業の中で検討します。
 展開(pp.16-18)に出現する式のうち,Ca-1およびCb-1の「20×4=80」,C12の「2×4」「3×4」「段数×4」は,図の作り直しのうち求め方③と関連が高いと言えます。それに対し,Ca-2の「4+4×19=80」は,求め方①です。Cb-2の「16+4×16=20」も,求め方①に類似していると言ってよさそうです。
 求め方②の事例は,見当たりませんでした。
 次との比較として,この授業では,まず「段の数」と「ぼうの数」の表を作成し,かけ算を含む式で表して20段の棒の数を求め,そのあと,3段の場合に,1段増えたときの関係(求め方①)および棒の移動(求め方③)を用いて成り立つことを見ています。

 2022年8月31日発行の「算数授業研究」にも,事例がありました。

  • 盛山隆雄: 小さなようで大きな違いを聞き取る, 算数授業研究, 東洋館出版社, No.142, p.29 (2022).

 「1段,2段,3段……と順に図を示して,伴って変わる周りの長さを求めた。」で終わる段落の直後に,3段の階段の図を載せています。長さの単位は書かれていません。また表も使用せず,子どもたちには式を発表してもらいました。
 式は「3×4=12」と「4×3=12」です。前者は求め方③,後者は求め方②と同様の図を用いて説明しています。
 次の文章で,このページを締めくくっています。なお[3]は原文では灰色の四角に白抜きの「3」です。

[3]小さな違いにこだわる子ども
 3×4と4×3のように,式の数値の順序が異なるだけで,大きな見方の違いを示すことがある。一見小さな違いに見えたり,聞こえたりすることでも,違いを聞き取り,その意味を考える子どもになってほしい。その結果,結局統合されることもあるが,それは,意味を考えたからわかること。小さな違いに面白いことはかくれている。

 盛山氏の報告には,求め方①は出現しませんでした。また「3×4=12」という式について,もとの図では3は段数ですが,説明にあたり「単位正方形の3倍の正方形の1辺の長さ」に変換しています。学年を下げれば,2年生向けの普通によくある*1かけ算の文章題で,期待される式が4×3であるところ,方形配列またはトランプ配りを用いて3×4も正解となることを認める余地が出てきます。