かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

「数値線図」から

 『イラスト図解ですっきりわかる算数』の続きです。
 「解決の見通し」と題するイラストが,p.92下部にあります。6種類の図があり,左から順に「ブロック」「おはじき」「線分図」「アレイ図」「数値線図」「グラフ」です。
 このうち「数値線図」というのは,数値が書かれていない二重数直線です。2本の線が右に伸び,それぞれの右端は「→」です*1。また左端は1本の縦線でつながっています。
 「数値線図」という名称には,見覚えがありません。2021年の取りまとめ*2には,入っていませんし,本書の同じページの上段の縦書きを読むと,「数直線図等」となっています。イラスト作成の段階で「数値線図」と書かれ,校正を経てそのまま残ったと考えられます。
 Googleで「数値線図」を検索しても,該当する事例は,ヒットしませんでした。
 かわりに,興味深いPDFファイルを見つけました。

 URLに「2020」と書かれているほか,ダウンロードしてプロパティを見ると,2020年6月作成となっています。最初のページは落ち着いて読めません。増加と合併は,その違いが分かるように表せるはずですが,統合されています。そのほか,図の構成というよりは見た目の話ですが,求差に関する4つの数直線について,どの横線も,真っ直ぐ水平方向になっていません。
 2ページ目について,何倍と数直線に二重数直線を使用し,包含除では1本の数直線に戻っており,「(線分図とほぼ同じ)」が右に添えられています。
 3ページ目以降がこの文書の本題となっています。「たての関係」という表記が,このページにあるほか,最後のページでも詳しく解説されています。最後のページの下の図と同等のものを,当ブログでも作成したことがありました*3。「たての関係」は,当ブログの2021年の取りまとめでは,「またぐような矢印」です*4
 このPDFファイルに,あえて追加するとなると,この数直線図の背景にある,算数・数学の性質に関するリファレンスでしょうか。「たての関係」まで含めた2×2の数値の乗法構造で,まっさきに思い浮かぶのは,Vergnaud (1983, 1988)ですし,数直線を通じて乗除の関係を視覚化し問題解決に活用するというのは,国内の書籍や学術文献で知ることができます*5