かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

『初等算数科教育法序論』に見る,かけ算の順序関係

 昨日書店で見かけて購入し,日が替わってから1時間半ほどで読み通しました。
 第6章(数と計算の教育)について,「加法,減法の意味」,「乗法の意味」,「除法の表し方と意味」のところを,時間をかけて読んだものの,当ブログで取り上げる要素はありませんでした。
 「かけ算の順序関係」という表記が,第7章(図形の教育)に含まれていました。巻末によると執筆者は津田真秀氏です。
 【代表的な三角形・四角形の面積】という小見出しのあと,文章をp.162から読むことができ,同ページ下部には,直角三角形・平行四辺形・三角形・台形の面積公式を得るための考え方が図示されていました。文章は「直角三角形」「一般的な三角形」「平行四辺形と台形」の順です。平行四辺形の面積の説明を書き出します(p.163)。

 最後に,平行四辺形と台形について見ていこう。同じ平行線内においての高さの話は上述した通りである。平行四辺形においても,配置や形状によっては底辺や高さを正しく抽出することが難しい場合があるので注意が必要である。平行四辺形の面積公式は「底辺×高さ」である。ここで,先ほどの長方形の面積公式にもどるが,長方形も平行四辺形であるため,「たて×横」は「底辺×高さ」と同じ意味合いを持つことがわかるだろう。発達段階や図形の形状によって,「たて×横,底辺×高さ」のかけ算の順序関係が変わる場合もあるが,交換法則を用いれば意味合いは同じである。平行四辺形の求積方法はいくつかあるが,既習の図形と関連させるのであれば,図形を切り取り,長方形とみなす考え方が良いだろう。(以下略)

 想起できる問題意識は,「長方形の面積の公式は『たて×横』だけれど,平行四辺形の面積の公式は『底辺×高さ』なのはどうして? 長方形の面積に合わせるなら,『高さ×底辺』にしたほうがいいんじゃないの?」です。上記の引用では,平行四辺形の面積を求めるための「底辺(の長さ)」と「高さ」を特定したら,長方形に帰着(等積変形)して「高さ×底辺」という言葉の式にした上で,乗法の交換法則を適用して「底辺×高さ」にすればよい,と解釈できます。
 別の方法で,問題の解決を図ることもできます。長方形の面積の公式として「たて×横」と「横×たて」の両方を認めておき,平行四辺形の面積公式の導出には「横×たて」のほうを利用する,というものです。

 現在公開されている『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説算数編』からだと,https://www.mext.go.jp/content/20211102-mxt_kyoiku02-100002607_04.pdf#page=265(と一つ前のページ)の図および説明がお勧めです。
 なお,「長方形の面積=たて×横」と「長方形の面積=横×たて」の両方を認めることについて,乗法の交換法則により一方から他方が示せるという見方もできますが,かけ算の意味(構造)のレベルで,長方形の面積を式に表す際には横と縦を区別しない(一方が被乗数,他方が乗数という関係ではない),と考えることも可能です。Vergnaud (1988)の一節を,ななめの長方形 - わさっきhbで引用しています。