かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

1じゃないほうの上に四角をかぶせるTOSSの数直線図

 Amazonの商品ページを見ると,「国語」「社会」「理科」「体育」「道徳」「プログラミング」で同様の本が出ていていずれも監修者は谷和樹氏です。https://twitter.com/NodokaNagomiを経由してhttps://www.nodoka-nagomi.net/というサイトを知ることもできました。
 それはさておき,本文の記述としては,教師による指示が中心の,TOSSのやり方です。
 読んでいくと,数直線に,見慣れないアレンジをした図に出くわしました。その最初の出現は,p.85なのですが,ノートを撮影したものと思われ,図が小さく読み取りにくいです。読み進めていき,p.91に,分かりやすい大きさの図がありました.以下はPowerPointで自作したものです。

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 単元(p.88の見出し)は6年「分数×分数」ですが,「簡単なときに、数直線図の書かせ方を教える」(p.88)として,指導をするという流れです。上の図に対応する問題は,「2mのひもと3mのひものねだんは、どちらも96円です。2mのひも1mのねだんと、3mのひも1mのねだんは、それぞれ何円ですか。」で,立式や計算は,3年での学習となります。
 図をじっくり見ますと,1本の数直線の上部には,問題文から読み取れる数量のうち金額に関するものを記載し,下部には,長さに関する値を並べています。「何円ですか」の箇所は□です。
 もう一つ,図には□があります。96が,大きめの*1四角で囲まれています。見開きの左のページ(p.90)の中央部に,「1じゃないほうの上に、四角でかぶせます。」が,カギカッコ付きになっており,教師からの指示なのが読み取れます。すぐ下には,解説として「この「1じゃないほうの上」という言葉が大事である。どんな場合でも,「1じゃないほうの上」に四角をかぶせる。」と書かれています。
 このように四角をかぶせる意図として,かけ算の関係構造と言ってもいいでしょう)が推測できます。上の図では,□×2=96という式に表せます。ここから(3年で学習する,除法と乗法との関係により)□=96÷2=48(円)を得ることができます。
 図式や意図は異なりますが,当ブログの以下の記述と類似しているように見えます.

  • 1と□が“はすかい”になっていれば,かけ算!
百分率の文章題(割合の第2用法)を二重数直線で解く

 その一方で,当ブログの2014年の図に出現し,96に四角をかぶせた今年の本の数直線図には見当たらないものも,あります。「×数」「÷数」といったオペレータ表記です。
 向山型算数では,「×いくつ」を採用しないのかなと思いながら,今回の本の前後を読むと,反例がp.87に見つかりました。「全体の面積が2000㎡の公園があります。全体の40%が広場,広場の80%がしばふになっています。しばふの面積は何㎡ですか。」の問題を解く図の中に,「×0.4」と「×0.8」が入っていました。
 「1じゃないほうの上に、四角でかぶせます。」は,数直線以外でも使用されています。具体的にはp.81の「面積図」で,面積図の縦と横は何を表すのかで紹介した③TOSSの面積図のことです。右上だけが囲まれているのは,そこに求めたい数量があるからではなく,1の上の数に,1の隣の数をかければ,“はすかい”の数になるという関係を示唆したものと言えます。
 細かな違いとして,今回の本(の面積図)でかぶせた四角の線が少し太めです。なおp.83にも同様の面積図がありますが,「1じゃないほうに四角。」と指示しているにもかかわらず,1の上の75(人)のところが,太い四角で囲まれています。
 表紙に「新時代のデジタル認識力」と謳い,谷氏による「刊行のことば」の中に例えば「パソコンやタブレットスマホなどを学習の道具として使っていない」(p.3)と書かれているのに対し,本書の授業内容にICTの要素が見当たらず*2電子書籍版が刊行されていないのは残念です。

*1:印刷における線は,数直線で使用されている線よりも細めです。ただしノートでは,どちらも同じ太さです。

*2:https://www.gakugeimirai.jp/archives/37262にもアクセスしましたが,デジタルコンテンツはありませんでした。