かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

みはじ批判(3): 「「速さ」の学習指導の提案」(2018)

1. 研究の背景と目的
 2016年12月に大学院生から、授業の実践力を高めるため、小学校6年生の単元「速さ」も模擬授業をするので見に来てほしいという依頼があった。その模擬授業を参観しながら、「子どもたちにとってなぜ速さの学習が難しいのか」、「道のりを時間で割る意味がわからないのではないか?」、「公式(みはじ等)で形式に理解させている(している)」、「これまでの一般的な展開では、速さを(道のり)÷(時間)で捉えることが難しいのではないか」と疑問を感じた。(略)
(p.45)


(p.48)

 1節の「公式(みはじ等)で形式に理解させている(している)」は,2016年度に模擬授業を参観した際の著者らの問題意識の一つであると同時に,「速さ」の学習・指導についての研究の展開のためのマクラにもなっています.一方で,表8は,2016年度(提案授業未実施)・2017年度(提案授業実施)のそれぞれの6年生に対し,「なぜそのような公式で速さを求めることができるか,説明してください。」(p.50)という記述式の出題の回答を分類したものです。分類項目の一つに「「みはじ」の利用」を入れ,「好ましいと言えない回答」としています。割合は,「関係式の逆演算*1として」と合わせて,2016年度の31.6%から,2017年度では13.8%へと減少しています。

*1:今回の文献に「関係式」は何回か出現しますが「演算」は見当たりません。可能性としては,「比べられる量=もとにする量×割合」という割合の関係式から「割合=比べられる量÷もとにする量」を導くのと同じように,「道のり=速さ×時間」を先に理解しておいて,関係式の逆演算として,「速さ=道のり÷時間」を導くというものですが,同種の量の割合と異種の量の割合を同等に扱ってよいのか,またこのように認識(類推)する6年生児童が集計で見つかるくらいにいるのかは,疑問があります。