かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

各教科書会社の系統表から「小数×整数」の出現箇所を求める

 「小学校の算数で学習する範囲では,かけ算は交換法則が成り立つので,かけられる数とかける数は,どちらでもよい」や「かけ算の交換法則を学んだ後は,かけられる数とかける数を区別しない」といった方針を,算数の教科書や学校の指導で,採用しているようには見えません。
 系統表でリンクしている,各教科書会社の系統表の4年を見ると,いずれにも「小数×整数」の表記があることがわかります。

  • 啓林館: 領域別系統表 A数と計算Ⅰの4年に,「小数×整数,小数÷整数の式」
  • 学校図書: 早わかり系統表 学年編 第4学年もくじに「小数×整数の計算」
  • 日本文教出版: 内容系統表(小学校算数~中学校数学)に「小数の加法・減法,小数×整数,小数÷整数 ④」
  • 教育出版: 数と計算の系統表/計算の4年に「小数×整数の計算のしかた,筆算のしかた」
  • 大日本図書: 領域別内容系統一覧表 A数と計算 乗法,除法の4年に,「小数×整数,小数÷整数の筆算」
  • 東京書籍: 領域別系統表(2010年)の4学年に「小数×整数,小数÷整数 ⑮」

 なお,東京書籍のサイトで,現行の教科書に基づく系統表を入手できませんでしたが,令和2年度 年間指導計画作成資料でリンクされている,算数4年細案には,「小数×整数」の表記があるほか,どのような立式や計算をするのかを知ることもできます。
 「小数×整数」は,小学校学習指導要領のうち「乗数や除数が整数である場合の小数の乗法及び除法の計算ができること」*1の乗法を,簡潔に表したものとなっています。
 教科書会社の外に目をやると,以下の2件が関連します。

高学年では小数の乗法を学習するが、第4学年では乗数が整数である場合に限られる。0.1 × 3ならば、0.1 + 0.1 + 0.1の意味である。第5学年では乗数が小数となる乗法を学習し、「1 mの長さが80円の布を2.5 m買ったときの代金」は、80 × 2.5で表される。

(p.286)
For multiplication, they proposed that the primitive model is repeated addition. In an equal-groups situation, such as 3 children having 4 oranges each, the situation can be conceptualized as 4 oranges + 4 oranges + 4 oranges, and the answer can then be calculated by repeated addition. This representation generalizes naturally to a situation such as 3 children having 4.2 liters of orange juice each, which can be conceptualized as 4.2 liters + 4.2 liters + 4.2 liters. For a situation to be assimilable to this model, the crucial factor is that the multiplier must be an integer; no restriction applies to the multiplicand. Moreover, this model of multiplication carries the implication that the result is always larger than the multiplicand.
乗法に対して,彼らはその原始的なモデルは累加であると述べました。「同等のグループ」の場面,例えば3人の子どもが4個ずつオレンジを持っているというとき,その場面は4+4+4として概念化され,その答え(総数)は累加によって計算できます。この立式の仕方は一般化して,3人の子どもが4.2リットルずつのオレンジジュースを持っているという場面にも適用できます。式は4.2+4.2+4.2です。このモデル(累加モデル)に属する場面の,重要な特徴は,乗数が整数でなければならないことです。被乗数に制約はありません。さらに,このモデルでは,結果が常に被乗数よりも大きくなることを含みます。