かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

Wikipedia「かけ算の順序問題」の学習指導要領・学習指導要領解説の記述は古い


 「学習指導要領・学習指導要領解説の記述」の項目の編集に,T.m.930の名前で携わったのは2013年10月です*1。その後も,小さな書き換えはありますが,2017年3月に告示された学習指導要領と,同年6月に最初の版が公開され,2019年まで何度か中身の変更のなされた『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説算数編』(以下『解説』)の内容は,反映されていません。
 現在,Wikipediaの編集に関わる意欲を持たないのですが,「学習指導要領・学習指導要領解説の記述」を現在の規定や教育の在り方に合わせたいと考える方のために,把握している情報を整理しておきます。
 まずは文部科学省サイトで読める,新旧の学習指導要領および解説へのリンクです。

 (解説のつかない)学習指導要領については,以下にて,過去のものと読み比べたり,学習指導要領内の各項目をURLで示したりすることができます。

 当ブログより一つ挙げるなら,以下の記事の後半(2. 現行および次期の学習指導要領から見た「順序」)です。

 乗法(かけ算)について,『解説』でどのような情報が加わり,Wikipediaに反映されていないかについては,以下の記事の最初の段落で書きました。

『小学校学習指導要領解説算数編』(平成29年6月)のPDFファイルでは,「1皿に5個ずつ入ったみかんの4皿分の個数」を式で表す際に「一つ分の大きさである5を先に書き5×4と記す」と明記しているほか,数ページ進めた先では,「4皿に3個ずつみかんが乗っている」場面に対する式は3×4となると書かれています。交換法則は,式で表現するときではなく,計算の結果を求める場合に活用してよいとしています。「プリンが3個ずつ入ったパックが5パックあります。プリンは全部で何個ありますか。」と「プリンが5個ずつ入ったパックが3パックあります。プリンは全部で幾つありますか。」の対置や,「4×100mリレー」という書き方にも,言及がなされています。串にささった団子と,アレイ(長方形的配置)の掲示物の写真について,前者はかけ算の式が1通り,後者は2通りあるのが読めます。これらは現行の解説にはなく,新しい解説は,踏み込んだ記述をしていると見ることもできます。

 上記の「 」は,最初に公開された『解説』のPDFファイルからの抜粋ですが,現在ダウンロードして読むことのできるPDFファイルだと,「一つ分の大きさである5を先に書き5×4と記す」ではなく「一つ分の大きさである5を先に書く場合5×4と表す」となっています。
 また,2つの場面の「対置」は,「ある場面では,a×bという式で表すのに対し,数量(1つ分の数といくつ分)を変えた別の場面では,b×aで表す」と言うことができ,令和2年度算数教科書読み比べ(5)~a×bとb×a,答えは同じでも意味が違うで教科書の内容を紹介しています。
 「4×100mリレー」の教科書の状況は,以下の「▼6年p.90~91」で見ることができます*2。4mずつ100人が走るのではなく,4人で100mずつ走るリレーであるのは既知とし,情報活用能力・読解力を育成するための算数の問題が構成されています。


 以下は個人的なメモです。式を具体的な場面に即して読み取る活動で最初に引用した文は,一つ前(平成20年6月)の解説ではp.98にあります。該当段落は新旧で完全に一致しており,その次の段落は「 」の中を除いて同一となっています。